ほくろを取るなら皮膚科?美容外科?|僕が「診断を先に」する理由

ほくろ除去で皮膚科と美容外科を選ぶ前に、良性か悪性かを診断する重要性を解説する記事のアイキャッチ画像

「ほくろを取りたいのですが、皮膚科と美容外科のどちらに行けばいいですか?」

よく聞かれる質問です。僕の答えは、診療科の名前だけで決めるより、まずその病変が本当に良性のほくろなのかを診断できる医療機関を選んでほしい、です。

ほくろ除去そのものは、切除、くり抜き、電気メス、炭酸ガスレーザーなど複数の方法があります。しかし、どの方法を選ぶかより前に、「これは本当に取ってよいほくろなのか」を確認する工程があります。

目次

結論|皮膚科か美容外科かより「診断できるか」が大切です

美容外科だから悪い、皮膚科なら必ず安心、という単純な話ではありません。大切なのは、治療前に肉眼所見やダーモスコピーで評価し、少しでも悪性が疑わしければレーザーなどで安易に消さず、病理検査や専門施設への紹介につなげられることです。

日本皮膚科学会の美容医療診療指針でも、ほくろなどの良性小腫瘍にレーザー蒸散を行う場合は、肉眼やダーモスコピーで良性と診断可能なものに限ること、鑑別が難しい場合には生検や切除による組織学的検索を検討することが示されています。

「ほくろに見える」ものが、必ずしもほくろとは限りません

一般にほくろと呼ばれるものの多くは、医学的には母斑細胞母斑という良性病変です。ただし、患者さん自身が「ほくろ」と思っている黒い病変の中には、基底細胞癌やメラノーマなどの皮膚がんが紛れていることがあります。

特に、左右非対称、境界が不整、色が均一でない、徐々に大きくなるといった変化は注意が必要です。日本皮膚科学会も、こうした所見がある場合には皮膚科専門医への受診を勧めています。

爪の黒い変化については、「爪が黒い|内出血・ほくろ・メラノーマの見分け方」でも詳しく解説しています。

ダーモスコピーは「取る前」の大切な検査です

ダーモスコピーは、光を当てながら皮膚の色や構造を拡大して観察する検査です。痛みはなく、ほくろとメラノーマなどの色素性病変を見分ける精度を高めるために使われます。

ただし、ダーモスコピーだけで100%診断できるわけではありません。診断に迷う病変、悪性を否定しきれない病変では、組織を残せる方法で切除・生検し、病理検査を行うことがあります。

「シミやほくろのように見える病変でも、まず診断が大切」という考え方は、「シミは全部同じではありません|治療前に『診断』が大切な理由」でも共通してお伝えしています。

ほくろを取る方法は一つではありません

切除して縫合する方法

病変をメスで切除して縫い合わせる方法です。ある程度大きい病変や、深さがありそうな病変などで選択肢になります。切除した組織を病理検査に提出できることも大きな利点です。一方で、線状の傷跡が残ります。

くり抜き・パンチ切除

円筒状の器具などで病変をくり抜く方法です。小さく盛り上がったほくろなどでは選択肢になります。部位や大きさによって、縫合する場合と自然に治す場合があります。

炭酸ガスレーザーなどで蒸散する方法

整容面を重視する小さな良性病変では、炭酸ガスレーザーなどで削る・蒸散する方法が選ばれることがあります。縫合が不要なことが多い一方、深い母斑細胞が残れば再発することがあり、削りすぎれば陥凹性瘢痕などの傷跡になる可能性もあります。

また、病変を蒸散してしまうと、病理診断に使える組織が十分に残らないことがあります。だからこそ、レーザーを当てる前に良性と判断できることが重要です。

手術後の傷跡については、「手術の傷跡を目立たせにくくするために僕が考えていること」も参考にしてください。

CLINICAL STORY

「ほくろ」として治療されていた20代の患者さん

これまでの診療で、今でも忘れられない患者さんがいます。

20代の方で、背中にあった黒い病変を美容外科で「ほくろ」として治療されていました。しかし、治療しても病変がなくなりませんでした。

その後に詳しく調べたところ、実際にはメラノーマでした。見つかった時にはすでに全身に転移していて、治療を行っても助けることができませんでした。

もちろん、この一例だけで美容外科でのほくろ除去すべてを否定するつもりはありません。ただ、この経験以来、僕は「取る技術」より前に、「何を取ろうとしているのかを診断すること」を強く意識しています。

ほくろ除去は美容的な処置に見えるかもしれません。でも、最初の診断を間違えれば、見た目だけでは済まないことがあります。だからこそ、僕はほくろを取る前の診察を省略したくありません。

こんなほくろは「取る」より先に診断を

  • 最近急に大きくなってきた
  • 左右非対称で形がいびつ
  • 境界がギザギザしている、にじんでいる
  • 黒・茶・赤など色が混じっている
  • 出血や潰瘍を繰り返す
  • 以前と見た目が変わってきた
  • 足の裏、爪、手のひらなどに新しい黒い病変が出た
  • 以前に治療したのに繰り返し出てくる、消えない

これらがあるから必ずメラノーマというわけではありません。ただ、「美容的に気になるからすぐレーザーで消す」より、まず診断を優先したい所見です。

IN PRACTICE

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 まず「本当にほくろか」を見る

患者さんがほくろだと思っていても、僕は最初からほくろと決めつけません。いつからあるか、変化しているか、肉眼所見とダーモスコピーを確認します。

2 診断に迷うものは、レーザーで消さない

少しでも悪性を疑う、あるいは良性と自信を持って言えない病変なら、組織が残る方法や皮膚腫瘍を専門とする施設への紹介を考えます。

3 良性と判断できて初めて、傷跡まで考えて取り方を選ぶ

良性のほくろであれば、大きさ、盛り上がり、深さ、部位、患者さんがどの程度傷跡を許容できるかを考えて、切除、くり抜き、レーザーなどから選びます。僕が大切にしたいのは「きれいに取ること」と「安全に診断すること」の両方です。

ほくろ除去を受ける医療機関を選ぶときに確認したいこと

  • 治療前に医師が病変を診察するか
  • 必要に応じてダーモスコピーで評価できるか
  • 悪性が疑わしいときにレーザー治療を中止できるか
  • 病理検査が必要な場合に対応できる、または適切な施設へ紹介できるか
  • 切除、くり抜き、レーザーなど複数の方法から選べるか
  • 傷跡や再発の可能性まで説明してくれるか

僕自身は、できれば皮膚科専門医など、皮膚腫瘍の診断に慣れた医師が診断したうえで、必要な方法を選べる医療機関でほくろ除去を受けてほしいと考えています。

まとめ

ほくろを取るときに大切なのは、「皮膚科か美容外科か」という看板だけではありません。

本当に良性のほくろなのかを診断できること。必要なら病理検査や専門施設へつなげられること。そのうえで、傷跡や再発まで考えて治療法を選べること。

ほくろ除去は小さな処置に見えても、診断が最も大切な場面があります。「とりあえず消す」のではなく、まず何を治療しようとしているのかを確認してから進めてほしいと思います。

参考文献・情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
プロフィールを見る →

目次