「赤いほくろのようなものが増えてきた」「小さな赤い点が服にこすれて血が出た」。こうした赤いできものの代表の一つが、老人性血管腫です。
「老人性」と呼ばれますが、高齢者だけにできる病気ではありません。年齢とともに数が増えやすい、良性の血管性病変です。
老人性血管腫とは?
老人性血管腫は、英語では cherry angioma と呼ばれる、皮膚の毛細血管が増えてできる小さな良性腫瘍です。赤色から暗赤色、紫色の小さな丸い隆起としてみられます。
体幹に多く、年齢とともに数が増える傾向があります。DermNetでは40歳頃から増加が目立ち、75歳以上では非常に多くみられるとされています。
どんな見た目になりますか?
- 1〜数mm程度の赤い点・丸い隆起
- 鮮やかな赤、暗赤色、紫色など
- 胸・お腹・背中など体幹に多い
- 1個だけのことも、多数みられることもある
- 通常は痛み・かゆみがない
血栓ができると黒っぽく見えることもあります。その場合、ほくろや皮膚がんと見分けにくくなることがあります。
原因は?
はっきりした原因は分かっていません。加齢に伴って増えやすく、家族内で多いこともあります。
突然増えたからといって、それだけで内臓の病気やがんを意味するわけではありません。数よりも、1つ1つの病変の形・増え方・出血のしやすさなどを見て判断することが大切です。
赤いできものには、似ている病変があります
| 病変 | 特徴の例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 老人性血管腫 | 小さく丸い赤〜紫色の丘疹 | 典型的なら視診・ダーモスコピーで判断できることが多い |
| 化膿性肉芽腫 | 短期間で大きくなり、出血しやすい赤い腫瘤 | 増大速度・出血 |
| 被角血管腫 | 暗赤色〜黒っぽく、表面が少し角化することがある | 部位・多発の仕方 |
| 基底細胞癌・メラノーマなど | 色・形が不規則、潰瘍、増大など | ダーモスコピーや必要に応じて病理検査 |
とくに黒っぽい、急に大きくなる、繰り返し出血する、形がいびつといった場合には、良性のできものと皮膚がんの見分けが重要になります。
診断はどうする?
典型的な老人性血管腫は、見た目とダーモスコピーで診断できることが多く、特別な検査は必要ありません。
一方で、診断に迷う場合には、生検や切除をして病理検査で確認することがあります。赤い病変だからといって、最初からレーザーなどで焼灼してしまうと病理診断ができなくなるため、診断が不確かな病変では組織を残すことが大切です。
治療しなくても大丈夫?
老人性血管腫は良性なので、見た目が気にならず、出血などの症状がなければ治療は不要です。
美容的に取りたい場合や、衣服にこすれて出血を繰り返す場合には治療を検討します。
治療方法
電気凝固
小さな病変を電気で凝固する方法です。隆起した小病変では短時間で処置できることがあります。
液体窒素
凍結によって病変を治療します。病変の大きさや部位によって選択します。
血管レーザー
赤い血管病変に反応するレーザーを用いる方法です。病変の深さ・大きさ・機器によって適応を考えます。
こんなときは皮膚科で相談してください
- 赤いできものが急に大きくなった
- 少し触れるだけで何度も出血する
- 黒っぽくなり、ほくろとの区別がつかない
- 表面が崩れる、潰瘍になる
- 見た目が気になり治療を希望する
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 典型的なら「取らなくても大丈夫」と説明します
老人性血管腫は非常によくある良性病変です。病気だから必ず取る、というものではありません。まず心配のない病変かどうかを確認します。
2 黒っぽい・形が変なら、老人性血管腫と決めつけません
血栓化した血管腫は黒く見えることがありますが、メラノーマなどとの鑑別が必要になることもあります。ダーモスコピーで見て、必要なら病理検査を考えます。
3 治療するなら、病変に合った方法を選びます
小さな隆起なら電気凝固などが向くことがありますし、赤みの強い病変では血管レーザーが選択肢になります。「全部同じ機械で取る」より、病変の厚さや色を見て決めます。
4 出血を繰り返す病変は、診断も含めて早めに確認します
老人性血管腫でも出血することはありますが、短期間で増大して頻繁に出血する病変は別の血管性腫瘍のこともあります。経過が典型的でなければ診断を優先します。
まとめ
老人性血管腫は、年齢とともに増えやすい小さな赤い良性血管腫です。典型的であれば治療は必要ありませんが、見た目が気になる場合や出血を繰り返す場合には、電気凝固・液体窒素・血管レーザーなどを検討できます。
ただし、黒っぽい、急速に大きくなる、出血しやすいなど典型的でない病変では、まず診断を確認してください。
参考文献・情報源
医学情報の確認日:2026年10月20日。
