シミは全部同じではありません|治療前に「診断」が大切な理由

シミの診断|治療前に見極めることが大切

「シミを取りたいです」

皮膚科や美容皮膚科では、とてもよくある相談です。

最近ではピコレーザー、Qスイッチレーザー、IPLなど、シミに使われる治療機器の名前を知っている方も増えました。

「このシミにはピコレーザーがいいですか?」

「IPLとレーザーはどちらがいいですか?」

と聞かれることも少なくありません。

ただ、僕がシミを診るときに最初に考えるのは、どのレーザーを使うかではありません。

まず考えるのは、

「これは本当にシミなのか?」
「レーザーを当ててもいい病変なのか?」

ということです。

シミ治療は、レーザーを選ぶところからではなく、診断するところから始まります。

目次

「シミ」は一つの病気ではありません

普段「シミ」と呼ばれているものは、医学的には一つの病気ではありません。

日本皮膚科学会などが作成した美容医療診療指針でも、シミとして扱われる色素異常には、日光黒子(老人性色素斑)、肝斑、雀卵斑、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)、炎症後色素沈着などがあり、同じ顔の中に複数が混在することも多いとされています。

たとえば、頬に茶色い色素斑がいくつかあったとしても、全部が同じ種類とは限りません。

種類よくみられる特徴治療の考え方
日光黒子(老人性色素斑)紫外線の影響などで生じる茶色いシミレーザーやIPLなどが選択肢
肝斑両頬などに左右対称に広がりやすいまず遮光や保存的治療を重視
雀卵斑(そばかす)小さな色素斑が多数みられる状態に応じレーザー・IPLなど
ADM頬骨周辺などに褐色〜青みを帯びた斑点レーザー治療が中心
炎症後色素沈着ニキビ、湿疹、傷などの炎症後に残る原因や経過をみながら治療
ほくろなどシミのように平らなものもある診断により手術なども検討

「茶色いから全部シミ取りレーザー」というわけではありません。

僕がまず確認するのは「皮膚がんではないか」

僕は色のついた病変を診るとき、レーザー治療を考える前に、まず悪性を疑う所見がないかを確認します。

そこで重要になるのが、ダーモスコピーです。

ダーモスコピーは皮膚の色や構造を拡大して観察する検査で、色素性病変の診断に非常に重要です。

一見すると普通のシミやほくろに見える病変の中に、まれではありますがメラノーマなどの皮膚がんが隠れていることがあります。

爪に出るメラノーマでは、内出血や色素線条との区別が重要です。爪の黒い変化については「爪が黒い|内出血・ほくろ・メラノーマの見分け方」で詳しく解説しています。

ほくろ除去の前に良性・悪性をどう考えるか、皮膚科と美容外科の違いについては、「ほくろを取るなら皮膚科?美容外科?|僕が『診断を先に』する理由」で解説しています。

もちろん、ダーモスコピーだけですべてを100%診断できるわけではありません。

悪性を疑う場合には、病変の一部または全部を切除して病理組織検査(生検)を行うことがあります。

「きれいに取れるか」より先に、「レーザーを当ててよいものなのか」を判断する。

これは皮膚科専門医として、僕がシミ治療で大切にしていることの一つです。

よくあるシミを少し詳しく

1.日光黒子(老人性色素斑)

一般的に「シミ取り」と聞いて、多くの方が想像するタイプです。

紫外線の影響を受ける顔や手などに生じやすく、中年以降に目立ってくることが多い色素斑です。

日光黒子に対しては、Qスイッチレーザー、ピコレーザー、IPLなどが治療の選択肢になります。機器ごとの違いは、「Qスイッチルビー・ピコレーザー・IPL|シミ取りは結局どれを選ぶ?」で詳しく解説しています。

ただし、

「老人性色素斑だと思っているものが、本当に老人性色素斑なのか」

を確認してから治療することが大前提です。

2.肝斑

肝斑は、主に頬などに左右対称に広がる色素異常です。

そして、シミ治療で特に焦らない方がいいのが肝斑です。

肝斑は紫外線などさまざまな影響を受けながら、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

そのため僕は、肝斑が目立つ状態で、

「早くシミを取りたいから、とりあえずレーザー」

とは考えません。

まず遮光などを基本に、必要に応じてトラネキサム酸などによる保存的治療を行い、肝斑を落ち着かせることを優先します。

そのうえで、肝斑とは別に老人性色素斑などが混在している場合には、その病変を見極めながらQスイッチルビーレーザーやピコレーザーなどを検討します。

老人性色素斑などに用いる高フルエンスのQスイッチレーザーを肝斑に安易に照射すると、炎症によって肝斑が悪化することがあります。

焦ってレーザーを当てないことも、シミ治療の一つです。 肝斑とレーザー治療の考え方は、「肝斑はレーザーで悪化する?|僕が焦ってレーザーをしない理由」で詳しく解説しています。

トラネキサム酸の内服は肝斑治療に用いられることがありますが、国内で承認された効能・効果に肝斑は含まれていません。また、既往歴等によって使用できない場合があるため、医師が適応を判断します。

3.雀卵斑(そばかす)

いわゆる「そばかす」です。

小さな褐色の色素斑が複数みられ、「顔全体に細かいシミがある」と相談されることがあります。

レーザーやIPLなどを検討することがありますが、日光黒子や肝斑とは性質が異なります。

だからこそ、治療機器を決める前に診断することが大切です。

4.ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

ADMは、一般の方にはまだあまり知られていない色素異常です。

特に頬骨周辺などに褐色〜褐紫色の小さな色素斑がみられ、肝斑と間違われることがあります。

ADMではメラニンが皮膚のより深い「真皮」に存在しており、肝斑とは治療の考え方が大きく異なります。

ADMではレーザー治療が重要な選択肢になります。

肝斑だと思って保存的治療だけを続けても、ADMなら十分改善しないことがあります。

逆に肝斑をADMだと思って強いレーザーを当てれば、悪化する可能性があります。

ここでも結局、

治療法より先に診断

なのです。

5.炎症後色素沈着

ニキビ、湿疹、やけど、傷、皮膚への強い刺激など、炎症が起きた後に茶色い色が残る状態です。

これも「シミ」として相談されることがあります。

また、レーザー治療そのものによって炎症後色素沈着が生じることもあります。

そのため、炎症後色素沈着を老人性色素斑と同じように考えて、何でも強いレーザーで取ればいいというものではありません。

「シミだと思っていたら、ほくろだった」こともあります

ほくろ(色素性母斑)の中には盛り上がっているものだけではなく、平らでシミのように見えるものもあります。

診察の結果、ほくろであれば、病変の種類、大きさ、場所などによってはレーザーではなく手術による切除を選ぶこともあります。

特に診断を確定する必要がある病変では、切除した組織を病理検査に提出できることも手術の大きな意味です。

一方で、良性と判断できる小さなほくろなどでは、レーザーによる治療が選択肢になる場合もあります。

実際の診療なら、僕はこう考えます

① まず診断する

色素性病変を診察し、必要な病変ではダーモスコピーなどを使って、メラノーマをはじめとする悪性腫瘍を疑う所見がないか確認します。

② 何の「シミ」なのかを考える

老人性色素斑なのか。

肝斑なのか。

ADMなのか。

炎症後色素沈着なのか。

それともほくろなど、そもそもシミではないのか。

実際には、一人の顔に複数の病変が混在していることも珍しくありません。

③ 肝斑があれば、焦らない

肝斑が目立つ状態なら、すぐに強いレーザー治療をしようとは考えません。

遮光を基本に、必要に応じてトラネキサム酸などによる治療を行い、まず肝斑を落ち着かせます。

④ その後で、残っているシミに適した治療をする

肝斑が落ち着いた後に老人性色素斑が残っていれば、Qスイッチルビーレーザーやピコレーザーなどを検討します。

ほくろであれば、レーザーではなく手術を選択することもあります。

「何のレーザーを当てるか」より先に、
「そもそも何のシミなのか」を考える。

シミ治療は、レーザー選びではなく、診断から始まります。

シミ治療は「最新の機械なら正解」ではありません

ピコレーザーだから必ずいい。

Qスイッチルビーレーザーだから古い。

IPLだから弱い。

僕は、そんなふうには考えていません。

それぞれの機械には得意なことがあります。

大切なのは、

その人の病変に、その治療が合っているか。

老人性色素斑にはレーザーが非常に良い選択になることがあります。

でも、肝斑ならあえて待つことがあります。

ADMならレーザーが重要になります。

ほくろなら手術を考えることがあります。

悪性を疑えば、美容治療をする前に病理診断が必要です。

だから、「一番いいシミ取りレーザーは何ですか?」という質問に、一つの機械の名前だけで答えることはできません。

まとめ

シミ治療で大切なのは、最初からレーザーを決めることではありません。

まず診断することです。

「シミ」と呼ばれているものの中には、老人性色素斑、肝斑、雀卵斑、ADM、炎症後色素沈着などさまざまな病態があり、複数が混在することもあります。

さらに、シミやほくろのように見える病変の中に、まれに皮膚がんが隠れていることもあります。

だから僕は、

診断 → 治療

という順番を大切にしています。

早く治療することが一番いいとは限りません。

必要なら一度待つ。

必要ならレーザーをする。

必要なら手術をする。

そして、疑わしい病変なら美容治療をせず、きちんと調べる。

患者さんが遠回りしないためにも、最初に「何を治療しているのか」をきちんと見極めることが、結果として一番大切だと思っています。

参考文献・参考資料

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AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
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