「ほくろを取るなら、切るのとレーザーはどちらがきれいですか?」と聞かれることがあります。
でも、僕は最初に治療方法を決めません。まず本当に良性のほくろなのかを診断し、そのうえで大きさ、深さ、場所、盛り上がり、傷跡の残り方まで考えて、切除・くり抜き・CO2レーザーから選びます。
この記事の結論
ほくろ除去は「レーザーか手術か」から考えるのではなく、まず診断。良性と判断できてから、部位・大きさ・深さ・再発しやすさ・傷跡の形を考えて方法を選びます。
ほくろを取る方法は、大きく3つあります
| 方法 | 特徴 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 切除して縫合 | 病変を切り取り、皮膚を縫い合わせる | 大きめ、深い、傷の形を線状に整えたい部位 | 線状の瘢痕が残る。抜糸が必要なことがある |
| くり抜き | 円筒状の器具などで病変を深さごと取り除く | 比較的小さく、再発をできるだけ抑えたいほくろ | 丸い傷になり、白く陥凹することがある |
| CO2レーザー | 組織を蒸散して削る | 良性と判断できる病変で、部位や形によって選択 | 深い細胞が残ると再発し得る。病理検査用の組織が残りにくい |
どの方法にも、「傷跡がゼロ」「絶対に再発しない」という方法はありません。大切なのは、そのほくろに合った方法を選ぶことです。
僕が一番大事にしているのは「取る前の診断」です
一般にほくろと呼ばれるものの多くは良性の母斑細胞母斑ですが、患者さん自身が「ほくろ」だと思っている黒い病変の中には、基底細胞癌やメラノーマなどの皮膚がんが紛れていることがあります。
そのため僕は、まず肉眼所見とダーモスコピーで確認します。最近大きくなった、形が左右非対称、境界が不整、色にむらがある、出血を繰り返すなど、少しでも悪性を疑う所見があれば、安易にレーザーで蒸散しません。
ダーモスコピーで見て怪しい病変は、病理検査ができる方法を選びます。診断に迷う病変では「きれいに取ること」より、何を取ろうとしているのかを確認することを優先します。
ほくろと皮膚がんの見分け方については、「ほくろとは?良性のほくろと皮膚がんの見分け方」で詳しく解説しています。
切除して縫合する方法
切除縫合は、病変をメスで切り取り、皮膚を縫い合わせる方法です。
最大の利点は、病変を組織として回収でき、必要なら病理検査に提出できることです。また、ある程度大きなほくろを無理に丸く削るよりも、線状の傷に整えた方が最終的に目立ちにくくなる部位があります。
一方で、傷は線として残ります。皮膚の張力や部位によっては、赤みや幅のある瘢痕になることもあります。
僕は約4mm以上なら縫合を選ぶことが多いです
これは絶対的な基準ではありませんが、僕の診療では直径がおよそ4mm以上のほくろでは、切除して縫合することが多いです。
大きな病変をくり抜いて自然に治すと、丸い陥凹が目立つことがあります。そこで、線状瘢痕にはなっても、最終的な形を整えやすい縫合を選ぶことがあります。
人中や顎のVラインでは、小さくても縫合を考えます
大きさだけではなく、場所も重要です。
僕は人中や顎のVラインなど、丸い陥凹性瘢痕が目立ちやすい場所では、比較的小さなほくろでも切除縫合を選ぶことがあります。
「レーザーなら傷が小さい」「縫うと傷が大きい」と単純に考えるのではなく、その部位で最終的にどの形の傷が目立ちにくいかを考えます。
くり抜きは、小さなほくろでよく使います
くり抜き法では、パンチなどを使ってほくろを円形に深さごと取り除きます。
僕は、特に顔の小さなほくろではCO2レーザーよりくり抜きを選ぶことが多いです。
理由の一つは再発です。ほくろは表面だけ削っても、深い部分に母斑細胞が残れば再び色や盛り上がりが出ることがあります。最近の系統的レビューでも、外科的切除はレーザー治療より再発率が低い傾向が示されています。
一方、くり抜きでも傷は残ります。数mmの丸い傷が徐々に縮んでいき、かなり目立ちにくくなる人もいますが、少し白くなったり、わずかに陥凹して残ったりすることがあります。
CO2レーザーは、僕は頭部で使うことが多いです
CO2レーザーは、病変を蒸散しながら削る治療です。出血が比較的少なく、縫合をしないことが多いのが特徴です。
僕自身は、頭部のほくろではCO2レーザーを使うことが比較的多いです。
一方、顔ではCO2レーザーで表面をきれいにしても、深部の母斑細胞が残ることで再発することがあります。そのため、顔のほくろは基本的にくり抜くことが多いです。
これは「顔にはCO2レーザーを使ってはいけない」という意味ではありません。深さ、盛り上がり、場所、患者さんがどのような傷跡を許容できるかによって選択は変わります。
また、CO2レーザーで病変を蒸散してしまうと、病理検査に十分な組織が残らないことがあります。そのため、悪性の可能性を否定しきれない病変には、最初からレーザーを選びません。
「レーザーなら傷が残らない」は違います
ほくろ除去を希望する方には、どの方法を選んでも傷がゼロになるわけではないと説明しています。
実際には、かなり目立ちにくくなることもあります。ただし、くり抜きやレーザーでは、治ったあとに少し白くなったり、わずかに凹んだりすることがあります。
切除縫合では線状の傷になります。赤みは時間とともに落ち着くことが多いですが、体質や部位によっては傷が幅広くなったり、盛り上がったりすることもあります。
だから僕は、治療前に「どの方法なら傷が残らないか」ではなく、どの傷の残り方がその場所では最も受け入れやすいかを一緒に考えます。
手術後の傷については、「手術の傷跡を目立たせにくくするために僕が考えていること」でも詳しく解説しています。
再発することはありますか?
あります。
特にレーザーや浅い処置では、深部に母斑細胞が残ると再び色や盛り上がりが出ることがあります。2026年の系統的レビュー・メタ解析でも、外科的切除は高い完全除去率と低い再発率を示し、CO2レーザーを含む非外科的治療では再発がより多い傾向が報告されています。
ただし、再発率だけで治療方法を決めるわけではありません。傷跡、部位、病変の深さ、処置の負担なども含めて選びます。
病理検査は全員に必要?
すべての良性ほくろを必ず病理検査に出す、というわけではありません。
僕はダーモスコピーで確認し、悪性が疑わしい、診断に自信が持てない、経時変化が気になるなどの場合には病理検査を行います。
反対に、臨床的に良性と判断できる病変では、部位や治療法によって病理検査を行わないこともあります。
重要なのは、病理検査をするかどうかを「取った後」ではなく、治療方法を決める前に考えておくことです。
僕ならどう選ぶ?
| 状況 | 僕が考えることが多い方法 |
|---|---|
| 顔の小さなほくろ | くり抜きを基本に考える |
| 約4mm以上のほくろ | 切除縫合を考えることが多い |
| 人中・顎のVライン | 丸い陥凹が目立ちやすいため縫合を選ぶことが多い |
| 頭部の良性ほくろ | CO2レーザーを使うことが比較的多い |
| ダーモスコピーで怪しい病変 | レーザーで消さず、病理検査できる方法を選ぶ |
これは僕自身の診療での目安で、全員にそのまま当てはまるルールではありません。ほくろの深さ、形、部位、皮膚の張力、既往歴などによって変わります。
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 最初に「何で取るか」は決めません
患者さんがレーザー希望でも、まずダーモスコピーで確認します。良性と判断できて初めて、傷跡まで含めて方法を選びます。
2 顔は、再発を考えてくり抜くことが多いです
CO2レーザーは便利ですが、顔では再発することもあります。僕は小さな顔のほくろなら、基本的に深さごと取れるくり抜きを選ぶことが多いです。
3 4mm前後を超えると、縫合を考えることが増えます
大きいほくろを丸く抜いて自然に治すと、陥凹が目立つことがあります。僕は約4mm以上なら、線状に縫合した方がよいかを考えます。
4 人中や顎のVラインは、傷の形を特に気にします
このあたりは丸い白色陥凹が目立つことがあるため、小さくても縫合を選ぶことがあります。「小さいからレーザー」が必ずしもきれいとは限りません。
5 傷がゼロになるとは説明しません
かなり目立たなくなることもありますが、少し白くなる、わずかに凹む、線状の瘢痕が残るなどの可能性はあります。治療前にその可能性まで説明してから取るようにしています。
まとめ:ほくろ除去は「方法」より先に「診断」です
切除、くり抜き、CO2レーザーには、それぞれ利点と弱点があります。
僕は、まずダーモスコピーで良性かどうかを確認し、その後に部位・大きさ・深さ・再発・傷跡まで考えて取り方を選ぶことを大切にしています。
「レーザーが一番きれい」「切ると必ず目立つ」という単純な話ではありません。どの方法がその人、その場所に合うかを考えることが、結果として一番遠回りしない方法だと思っています。
参考文献・情報源
医学情報の確認日:2026年10月2日。実際の治療方法は、病変の診断、部位、大きさ、深さ、患者さんの希望などを踏まえて個別に判断します。
