「顔が赤い」「なんとなくほてる」「ニキビのようなぶつぶつができるけれど、なかなか治らない」——そんな症状で悩んでいる方の中に、酒さ(しゅさ)が隠れていることがあります。
酒さは、鼻や頬を中心に赤みやほてり、ぶつぶつなどが慢性的に繰り返される皮膚の病気です。
「体質だから」「敏感肌だから」と自己判断してスキンケアだけで様子を見ているうちに、症状が長引いてしまうケースも少なくありません。
この記事では、酒さがどのような病気で、どんな症状が出るのか、ニキビや他の病気とどう違うのか、そして治療はどのように考えられているのかを、皮膚科医の立場から整理します。
酒さとは?
酒さ(酒皶)は、主に顔の中心部——頬や鼻、額、あご——に、赤みやほてり、ぶつぶつなどの症状が慢性的に、あるいは繰り返し現れる炎症性の皮膚疾患です。
「顔が赤くなる病気」とだけ説明されることもありますが、実際にはそれだけでは足りません。持続する赤みだけでなく、毛細血管の拡張、ニキビに似たぶつぶつや膿疱、鼻の皮膚が厚くなること、まぶたや目の症状まで、現れ方は人によって大きく異なります。
症状の中心がどこにあるかによって、必要な検査や治療の考え方も変わってくるため、「酒さ=ひとつの決まった治し方がある病気」ではない、という理解がまず大切です。
酒さではどんな症状が出る?
酒さの症状は一様ではなく、現在のガイドラインでは、症状の中心がどこにあるかによって、大きくいくつかのタイプに整理されています。以下は代表的な現れ方です。
赤み・ほてり・毛細血管拡張
頬や鼻を中心に、赤みやほてり感が続くタイプです。皮膚の表面に、細い血管が枝分かれしたように透けて見える「毛細血管拡張」を伴うこともあります。
飲酒や気温の変化、香辛料の強い食事などをきっかけに、一時的に顔が熱くなったり赤みが増したりすることを繰り返すのが特徴です。
赤いぶつぶつ・膿疱
ニキビのような赤いぶつぶつ(丘疹)や、中に膿を持ったぶつぶつ(膿疱)が主体となるタイプです。
この違いについては、後の「ニキビや湿疹とはどう違う?」でもう少し詳しく説明します。
鼻などの皮膚が厚くなるタイプ
長期間の炎症が続くことで、鼻を中心に皮膚が厚く、凹凸のある状態になることがあります。これは瘤腫型酒さ(鼻瘤)と呼ばれるタイプで、他のタイプに比べると頻度は高くありませんが、進行すると見た目の変化が大きくなりやすいタイプでもあります。
目の症状を伴うこともある
酒さは皮膚の症状だけでなく、まぶたや目の充血、異物感、乾燥感などの目の症状を伴うことがあります(眼型酒さ)。まぶたの縁にあるマイボーム腺という脂の分泌腺の働きが乱れることが関係していると考えられています。
目の症状が強い場合には、皮膚科だけでなく眼科での相談が必要になることもあります。
酒さの原因は?
酒さの原因は、まだ完全には解明されていません。「毛包虫(もうほうちゅう)というダニの一種が原因」「血管の異常が原因」など、単一の原因で説明されることがありますが、実際にはそれほど単純ではないと考えられています。
現在では、生まれつき備わっている免疫のしくみ(自然免疫)の過剰な反応、血管の拡張・炎症反応、神経を介した血管の反応、皮膚のバリア機能の変化、そして毛包虫の関与など、複数の要因が組み合わさって症状を引き起こしていると考えられています。
どの要因がどの程度関わっているかは、症状のタイプや患者さんによっても異なるため、「これさえ改善すれば治る」と一つの原因に絞り込みすぎないことが大切です。
酒さを悪化させるもの
酒さは、特定のきっかけで一時的に赤みやほてりが強くなることがあります。代表的なものとして、紫外線、急激な気温の変化、香辛料の強い食事、飲酒などが挙げられます。
このほかにも、暑さや寒さ、運動、入浴、精神的なストレス、刺激の強いスキンケアなどで症状が悪化したと感じる方もいます。
ニキビや湿疹とはどう違う?
顔に赤みやぶつぶつが出ると、「ニキビができた」「肌荒れした」と考える方が多く、酒さだと気づかれないまま長期間過ぎてしまうこともあります。
特に紛らわしいのがニキビとの違いです。
ニキビは毛穴のつまりから炎症が始まるのに対し、酒さは毛穴のつまりを伴わずに赤みやぶつぶつが生じる点が大きな違いです。ただし実際には、酒さとニキビの両方の要素を持つ人もいます。面皰の有無、入浴後の赤み、ヒリヒリ・ほてりなど、見分けるポイントは「酒さとニキビの違い|赤み・ぶつぶつをどう見分ける?」で詳しく解説しています。ニキビ自体の治療の考え方については、ニキビ治療の総合ガイド|皮膚科でどう治す?跡を残さないための考え方をご覧ください。また、ニキビが治った後に残る赤み(ニキビ跡)は酒さの赤みと混同されやすいのですが、原因も対応も異なります。ニキビ跡は全部同じではありません|赤み・クレーターの種類で治療が変わる理由もあわせてご覧ください。
また、酒さは次のような病気とも見分けが必要です。
- 脂漏性皮膚炎:皮脂の多い部位に、赤みとかさつき・フケのような鱗屑を伴う
- 接触皮膚炎:特定の化粧品や外用薬などへの反応で、かぶれのような症状が出る
- 口囲皮膚炎:口の周りを中心に、小さなぶつぶつや赤みが出る
- ステロイドによる酒さ様皮膚炎:顔にステロイド外用薬を長期間使用したことがきっかけで、酒さに似た症状が生じる
これらはいずれも治療の方向性が異なるため、自己判断で市販薬やスキンケアだけを試し続けるのではなく、皮膚科で見分けてもらうことが遠回りをしないための近道になります。
酒さはどう診断する?
酒さの診断は、血液検査など単独の検査だけで確定できるものではありません。診察で、赤みやぶつぶつの分布、経過、悪化・改善のパターンなどを確認しながら、総合的に判断していきます。
ニキビや脂漏性皮膚炎など、似た症状を示す他の病気を除外するために、必要に応じて追加の検査を行うこともあります。
「顔が赤いのは体質だから」と自己判断で片づけず、気になる症状が続く場合は、一度皮膚科で診てもらうことをおすすめします。「顔の色や赤みの変化を自己判断で済ませない」という考え方は、シミは全部同じではありません|治療前に「診断」が大切な理由でも触れていますので、あわせてご覧ください。
酒さの治療は症状によって変わる
酒さの治療は、症状のどこが中心になっているかによって考え方が変わります。ここでは全体像だけを紹介します。保険診療と自費診療の詳しい使い分けは、「酒さの治療|保険治療と自費治療をどう考える?」で詳しく解説しています。
赤み・毛細血管拡張が中心の場合
持続する赤みや毛細血管拡張が主体の場合、パルス色素レーザーやロングパルスNd:YAGレーザー、IPL(光治療)などが選択肢として挙げられることがあります。
ぶつぶつ・膿疱が中心の場合
赤いぶつぶつや膿疱が中心となるタイプ(丘疹膿疱型酒さ)に対しては、0.75%メトロニダゾール外用薬が、日本皮膚科学会のガイドラインで中心的な選択肢として位置づけられています。
このほか、アゼライン酸や、テトラサイクリン系の内服薬が選択肢に挙がることもありますが、国内でのエビデンスの蓄積や承認状況は薬剤によって異なります。「海外で使われているから」「保険が使えるはず」と一律に考えるのではなく、それぞれの薬の位置づけを踏まえて選ぶことが大切です。
自宅で気をつけたいスキンケア
酒さのある肌は、刺激に敏感になっていることが多いため、日常のスキンケアにもいくつか気をつけたいポイントがあります。
- 洗顔時にゴシゴシこすらない
- 刺激の強い製品を、無理に使い続けない
- 保湿で肌のバリア機能をサポートする
- 紫外線対策を習慣にする
特定の化粧品やブランドが誰にでも合うとは限らないため、迷ったときは自己判断で色々と試す前に、皮膚科で相談することをおすすめします。
こんなときは皮膚科へ
- 顔の赤みやほてりが長期間続いている
- 市販のスキンケアや洗顔方法を変えても改善しない
- ニキビだと思って市販薬を使っても良くならない
- 赤いぶつぶつや膿疱が繰り返し出てくる
- 目の充血や異物感など、目の症状もある
上記に当てはまる場合は、自己判断を続けるよりも、一度皮膚科を受診して診断を受けることをおすすめします。
実際の診療なら、僕はどう考えるか
1 まず「本当に酒さなのか」を大事にしています
顔の赤みやぶつぶつを見たときに、最初から酒さと決めつけることはしません。ニキビや脂漏性皮膚炎など、似た症状の病気は他にもあるため、まず診断を大事にしています。
2 顔が赤いからといって、最初からレーザーありきでは考えません
「赤み=レーザー」とすぐに結びつけることはしていません。どのタイプの酒さなのかを見極めたうえで、必要な治療を考えます。
3 赤み・毛細血管拡張が主なのか、丘疹・膿疱が主なのかで治療は変わります
同じ「酒さ」でも、赤みや血管の拡張が中心なのか、ぶつぶつや膿疱が中心なのかによって、選ぶ治療は変わってきます。
4 保険診療と自費診療、それぞれの役割で考えます
保険診療でできること、自費診療でしかできないこと、それぞれに役割があると考えています。どちらか一方だけで押し通すのではなく、症状に合わせて考えます。
5 患者さんに合う選択肢を提示したいと思っています
治療の選択肢は一つではありません。それぞれの生活や希望も踏まえながら、合う選択肢を一緒に考えていきたいと思っています。
6 レーザー万能論にはしません
レーザーをすれば酒さがすべて解決する、とは考えていません。レーザーが向いている方もいれば、外用薬を中心に考えたほうがよい方もいます。
酒さは、
「体質だから仕方ない」で終わらせる病気ではありません。
どのタイプが中心かを見きわめて、
合う治療を選びたいと思っています。
レーザーが向いている方もいれば、外用薬だけで十分な方もいます。
まとめ
酒さは、「顔が赤くなる病気」というひとことでは片づけられない病気です。赤み・ほてり・毛細血管拡張が中心のタイプもあれば、ニキビに似たぶつぶつや膿疱が中心のタイプ、鼻の皮膚が厚くなるタイプ、目の症状を伴うタイプもあります。
ニキビと似ているようで、面皰の有無など見分けるポイントがあり、自己判断で市販薬やスキンケアだけを続けていると、改善までに時間がかかってしまうこともあります。
顔の赤みやぶつぶつが続いて気になる場合は、一度皮膚科で診断を受けることをおすすめします。治療の詳しい選び方は、「酒さの治療|保険治療と自費治療をどう考える?」で解説しています。
