脂漏性角化症とは?老人性いぼの見分け方と治療|液体窒素・レーザー

脂漏性角化症とは?老人性いぼの見分け方と治療

顔や首、背中などに、茶色〜黒っぽい「いぼ」のようなものが増えてきた。表面が少しざらついていて、貼り付いたように見える。

こうしたできものの代表が、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)です。一般には「老人性いぼ」「年寄りいぼ」と呼ばれることもあります。

脂漏性角化症は非常によくみられる良性腫瘍で、ウイルス性いぼではありません。ただし、黒っぽい脂漏性角化症は、ほくろ・基底細胞癌・メラノーマなどと似て見えることがあります。取る前に「本当に脂漏性角化症か」を確認することが大切です。

この記事では、脂漏性角化症の特徴、ウイルス性いぼやほくろとの違い、ダーモスコピー、治療法、治療後の色素沈着や傷跡まで解説します。

目次

脂漏性角化症とは?

脂漏性角化症は、年齢とともに増えやすい表皮由来の良性腫瘍です。

日本皮膚科学会のQ&Aでも、「年寄りイボ」の代表として脂漏性角化症が挙げられています。一方、尋常性疣贅はHPVによる感染症であり、同じ「いぼ」という言葉でも全く別の病気です。

30〜40代以降から徐々にみられるようになり、加齢とともに数が増えていくことがあります。

どんな見た目をしている?

脂漏性角化症の見た目はかなり幅があります。

  • 薄い茶色の平らな斑点
  • 濃い茶色〜黒色の盛り上がり
  • 表面がざらざらした病変
  • 蝋を貼り付けたように見える病変
  • 数mm程度のものから1cm以上のもの

顔、頭部、首、胸、背中などに多くみられます。

通常は痛みませんが、衣類にこすれる、ひっかく、炎症を起こすなどすると、赤くなったり、かゆみや出血が出ることがあります。

「老人性いぼ」だけど、ウイルス性いぼではない

脂漏性角化症はHPVによるいぼではありません。

特徴 脂漏性角化症 尋常性疣贅
原因 加齢などに関連する良性腫瘍 HPV感染
好発 顔・頭・体幹など 手足など
感染 しない 広がることがある
治療 液体窒素、掻爬・切除、レーザーなど 液体窒素などが中心

ウイルス性いぼについては、「尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)とは?」で詳しく解説しています。

ほくろ・皮膚がんとどう見分ける?

典型的な脂漏性角化症は、診察だけでもかなり判断できます。

ただし日本人では色素の濃い脂漏性角化症も多く、肉眼だけでは色素細胞母斑(ほくろ)、基底細胞癌、メラノーマなどとの鑑別が難しいことがあります。

そこで役立つのがダーモスコピーです。

ダーモスコピーで見る所見

脂漏性角化症では、代表的に次のような所見がみられます。

  • 稗粒腫様嚢腫
  • 面皰様開孔
  • 溝・隆起
  • ヘアピン様血管

これらを組み合わせることで、脂漏性角化症らしさを判断します。

ただし、ダーモスコピーだけで100%確定するわけではありません。悪性腫瘍を否定できない病変では、無理にレーザーや液体窒素で消してしまわず、生検や切除で病理組織を確認することがあります。

ほくろとの違いは、「ほくろとは?良性のほくろと皮膚がんの見分け方」、基底細胞癌は「基底細胞癌とは?」も参考にしてください。

放置しても大丈夫?

典型的な脂漏性角化症であれば良性なので、必ず取る必要はありません。

治療を考えるのは、

  • 見た目が気になる
  • 衣類やマスクに引っかかる
  • かゆい
  • 繰り返し出血する
  • 炎症を起こす

といった場合です。

脂漏性角化症の治療方法

大きさ、厚み、部位、数、色素沈着や傷跡のリスクを考えて治療法を選びます。

1.液体窒素

液体窒素で凍結し、病変を壊して取る方法です。

比較的手軽に行えますが、1回で完全に取れない場合があります。また、特に顔や首では炎症後色素沈着や色素脱失が目立つことがあります。

「取れればよい」だけではなく、治療後の色の変化まで含めて選ぶ必要があります。

2.掻爬・シェーブ・切除

盛り上がった脂漏性角化症を、局所麻酔下に削る、掻爬する、浅く切除する方法があります。

病変を一度に除去しやすいことが利点です。病理診断が必要な場合には、組織を残す方法を選びます。

3.電気焼灼

電気メスなどで病変を焼灼して除去します。

小さな盛り上がりを処置しやすい方法ですが、熱によるダメージが大きいと色素沈着や瘢痕につながるため、深く処置しすぎないことが重要です。

4.CO2レーザー・Er:YAGレーザー

整容目的では、CO2レーザーやEr:YAGレーザーで病変を蒸散する方法もあります。

2024年の日本皮膚科学会誌でも、脂漏性角化症に対する蒸散レーザー治療が紹介されています。レーザーは細かく深さを調整しやすい一方、熱傷、炎症後色素沈着、瘢痕などのリスクがあります。

レーザーで消す前に診断がついていることが前提です。悪性腫瘍の可能性が少しでもある病変を、診断せずにレーザーで消してしまうのは避けます。

顔の脂漏性角化症は治療法をどう選ぶ?

顔は、取った後の赤みや色素沈着が目立ちやすい部位です。

そのため、病変が薄いのか厚いのか、色素が濃いのか、何個あるのか、病理検査が必要かまで考えて治療を選びます。

同じ脂漏性角化症でも、すべてを同じ方法で処置する必要はありません。

保険診療?自費診療?

脂漏性角化症の治療が保険になるか自費になるかは、症状、治療目的、治療方法、医療機関の運用によって異なります。

出血や炎症など医学的に治療が必要な場合には保険診療になることがあります。一方、見た目を整える目的でレーザー除去を行う場合などは、自費診療として扱われることがあります。

治療前に費用区分を確認しておくと安心です。

急にたくさん増えたら、がんのサイン?

「脂漏性角化症が急に大量に増えると内臓がんのサイン」という話を聞いたことがあるかもしれません。

これはLeser-Trélat徴候(レーザー・トレラ徴候)と呼ばれ、短期間に多数の脂漏性角化症が急激に出現・増大する所見と内臓悪性腫瘍との関連が報告されています。

ただし、脂漏性角化症そのものは高齢になるほど非常にありふれた病変で、がんも年齢とともに増えるため、両者の因果関係や診断的価値については議論があります。

普通に数年かけて脂漏性角化症が増えてきただけで、「がんがある」と考える必要はありません。

一方、数週間〜数か月という短期間に明らかに大量出現した、急速に増大した、全身症状があるなど、通常と違う経過なら一度医師へ相談します。

IN PRACTICE

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 「老人性いぼ」だからと、いきなり取らない

茶色や黒の盛り上がりには、ほくろ、基底細胞癌、メラノーマなどが混じります。まず診察とダーモスコピーで、脂漏性角化症として矛盾がないかを確認します。

2 少しでも悪性を疑えば、消す治療より病理診断を優先します

レーザーや液体窒素で病変を壊すと、後から病理検査ができません。診断に迷う病変は、生検や切除で組織を確認する方が安全です。

3 顔では「取れるか」より「取った後どう見えるか」まで考えます

顔は炎症後色素沈着や瘢痕が目立ちます。薄い病変、厚い病変、多発例で同じ治療にせず、病変ごとに方法を選びます。

4 典型例なら、気にならなければ何もしなくて大丈夫です

脂漏性角化症は良性です。増えてきたという理由だけで全部取る必要はなく、本人が困っているものを治療すれば十分です。

まとめ

脂漏性角化症は、年齢とともに増えやすい非常に一般的な良性皮膚腫瘍です。

「老人性いぼ」と呼ばれますが、HPVによるウイルス性いぼではなく、人へうつるものでもありません。

典型例はダーモスコピーを使うことで診断精度を上げられます。一方、ほくろ、基底細胞癌、メラノーマなどと区別しにくい場合には、生検・切除による病理診断を優先します。

治療は液体窒素、掻爬・切除、電気焼灼、CO2レーザーなどから選びますが、特に顔では色素沈着や傷跡まで含めて治療法を選ぶことが大切です。

参考文献・情報源

医療情報確認日:2026年10月23日

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AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
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