手や足にできた「いぼ」が、液体窒素を何回やってもなかなか治らない。そんな経験がある人は少なくありません。
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚に感染してできるウイルス性のいぼです。治療の基本は液体窒素ですが、特に手のひらや足の裏では数か月かかることもあり、1つの治療だけではなかなか治らないことがあります。なお、首に多発する柔らかい「いぼ」はHPVではなく、アクロコルドン(スキンタッグ)のことがあります。
この記事では、液体窒素は何回くらい必要なのか、痛みや水ぶくれは大丈夫なのか、そして治りにくいときにどんな治療を考えるのかを、実際の診療での考え方も含めて解説します。
尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)とは?
尋常性疣贅は、HPVが皮膚の小さな傷などから入り込み、皮膚が盛り上がってできる良性の病変です。手指、手のひら、足の裏、爪の周囲などによくみられます。
表面がざらざらしていたり、角質が厚くなっていたりすることが多く、足の裏では体重がかかるため外側に盛り上がらず、魚の目のように見えることがあります。足裏のいぼと魚の目の違いについては、「足裏のいぼと魚の目の見分け方」でも詳しく解説しています。
治療の基本は液体窒素
尋常性疣贅の治療で最もよく行われるのが、液体窒素による凍結療法です。非常に低温の液体窒素でいぼを凍結し、病変を壊していきます。
日本皮膚科学会の尋常性疣贅診療ガイドラインでも、液体窒素凍結療法は基本となる治療の一つで、十分な強さで行うことが推奨されています。角質が厚いいぼでは、治療前に表面の角質を削ってから液体窒素を当てることもあります。
液体窒素は何回で治る?
何回で治るかは、正直なところ最初には読めません。数回で消えるものもあれば、何か月も治療が必要ないぼもあります。
特に手のひらや足の裏は角質が厚く、治療に時間がかかることがあります。僕は初診時に「手のひらや足の裏は数か月単位になることがあります」と説明することが多いです。
治療間隔にもいくつか考え方がありますが、ガイドラインでは1〜2週ごとの液体窒素治療が示されています。僕自身は、基本的に毎週治療しています。
液体窒素は痛い?水ぶくれができても大丈夫?
液体窒素治療では、処置中の痛みや、処置後のヒリヒリ感、水ぶくれ、血豆のような変化が起こることがあります。これは凍結によって皮膚に炎症が起きるためです。
水ぶくれができたからといって、それだけで異常というわけではありません。僕は、十分に凍結することを重視しているので、あらかじめ「治療後に水ぶくれができることはあります」と説明しています。
ただし、強い腫れが続く、膿が出る、痛みが時間とともに強くなるなど、通常の治療後反応とは違う変化がある場合は受診してください。
厚いいぼは「削る」ことも大切
足の裏などで角質が分厚くなっている場合、そのまま液体窒素を当てても冷却が病変に届きにくいことがあります。そのため、必要に応じて角質を削ってから治療します。
ガイドラインでも、角質除去と液体窒素を組み合わせる考え方が治療の基本ラインとして示されています。見た目には小さくても、厚みがあるいぼではこの一手間が重要になることがあります。
3か月やっても治らなければ、同じ治療だけを続けない
尋常性疣贅で悩ましいのは、毎週きちんと液体窒素を行っても、なかなか反応しないいぼがあることです。
僕は厳密に「何回で変更」と決めているわけではありませんが、3か月程度しっかり治療しても改善が乏しければ、違う方法を考えることが多いです。
これは僕個人の感覚だけではなく、日本皮膚科学会のガイドラインでも、1つの治療に長く固執せず、3か月程度を目安に評価して治療法を変更・ローテーションする考え方が示されています。
治りにくいいぼでは、どんな治療を使う?
液体窒素で治りにくい場合には、いくつかの治療法があります。どれか1つが必ず効くわけではなく、いぼの厚さ、これまでの反応、痛みへの耐え方などを見ながら組み合わせます。
スピール膏(サリチル酸)
サリチル酸には角質を柔らかくして除去しやすくする作用があります。僕も、必要に応じてスピール膏を併用します。特に角質の厚いいぼでは、液体窒素と組み合わせることがあります。
MCA(モノクロロ酢酸)
MCA(モノクロロ酢酸)は、強い腐食作用を利用していぼの組織を処置する方法です。僕は、液体窒素だけではなかなか治らない場合に比較的よく併用します。
強い酸を使用する治療なので、正常な皮膚につくとやけどのような障害を起こす可能性があります。医療機関で適切に扱う必要があり、標準的な第一選択治療というよりは、難治例で検討する選択肢の一つです。
いぼ剝ぎ法
局所麻酔を行い、いぼの組織を剝離して取り除く方法です。ガイドラインにも治療選択肢として記載されていますが、一般的にはあまり広く行われていない治療です。
僕は、特に分厚く盛り上がった難治性のいぼでは、いぼ剝ぎ法を選択肢に入れます。
CO2レーザー
CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)でいぼの組織を蒸散させる方法です。局所麻酔が必要になり、傷として治していく期間も必要ですが、分厚いいぼなどで検討することがあります。
ブレオマイシン局所注射
ブレオマイシンをいぼの中に局所注射する治療です。ガイドラインでも難治性疣贅に対する選択肢の一つとして挙げられています。一方で、注射時・注射後の痛みなどに注意が必要で、誰にでも行う治療ではありません。
Vbeamなどのパルス色素レーザー
いぼの中には血管が入り込んでいるため、パルス色素レーザーでその血管を標的にする治療があります。Vbeamもその一つです。レーザー治療についてもガイドラインでは有効性が報告されており、難治例で選択肢になることがあります。
これらの治療は、すべての皮膚科で行われているわけではありません。また、治療法によって保険適用の有無や費用の扱いが異なるため、実際に受ける場合は各医療機関で確認が必要です。
ヨクイニンは使う?
尋常性疣贅に対してヨクイニンが処方されることもあります。ガイドラインにも治療選択肢として記載されていますが、僕自身はヨクイニンを積極的に使うことはあまりありません。
治療の中心は局所治療と考えており、液体窒素、角質除去、必要に応じた追加治療を組み合わせることを重視しています。
- まずは液体窒素を毎週行います。角質が厚ければ、削ってからしっかり凍結します。
- 何回で治るかは最初には読めません。特に手のひら・足の裏は数か月かかることがあると説明しています。
- 液体窒素後の痛みや水ぶくれは起こり得ます。僕は弱く当て続けるより、十分な凍結を行うことを重視しています。
- 3か月程度続けても反応が乏しければ、同じ治療だけを延々と続けません。MCAを併用したり、分厚ければいぼ剝ぎ法やCO2レーザーなどを考えます。
- さらに難治なら、ブレオマイシン局注やVbeamなども含めて選択肢を広げます。治りにくいいぼに対して、使える手段を複数持っておくことが大切だと考えています。
受診したほうがいいのはどんなとき?
次のような場合は、皮膚科で一度確認することをおすすめします。
- いぼか魚の目か分からない
- 数が増えてきている
- 爪の周囲など治療しにくい場所にある
- 手のひら・足の裏で長期間治らない
- 液体窒素を数か月続けてもほとんど変わらない
- 一度治ったように見えたのに再発した
特に「何か月も液体窒素を続けているのに全く変わらない」という場合は、診断が本当に疣贅なのかをもう一度確認したうえで、別の治療法を検討してもよいと思います。
まとめ
尋常性疣贅の治療の基本は液体窒素です。ただし、何回で治るかは予測しにくく、手のひらや足の裏では数か月かかることもあります。
角質が厚ければ削る、必要に応じてスピール膏を併用する。それでも治らなければ、MCA、いぼ剝ぎ法、CO2レーザー、ブレオマイシン、パルス色素レーザーなど、次の選択肢を考えます。
いぼ治療で大切なのは、1つの方法を漫然と続けることではありません。治療への反応を見ながら、必要なら方法を変えたり組み合わせたりして、その人に合う治療を探していくことだと思います。
