「丸い湿疹が何個もできて、なかなか治らない」「たむしだと思って薬を塗ったけれど良くならない」。そんなときに考える病気の一つが、貨幣状湿疹です。
名前の通り、コインのような円形〜楕円形の湿疹ができるのが特徴です。ただし、輪っか状の発疹をつくるたむし(体部白癬)などと見た目が似ることがあります。
貨幣状湿疹とは?
貨幣状湿疹は、円形〜楕円形の境界が比較的はっきりした湿疹ができる病気です。英語では nummular dermatitis、discoid eczema と呼ばれます。
すね、腕、体幹などにみられ、強いかゆみを伴うことがあります。じゅくじゅくしてかさぶたを伴うタイプと、乾燥してカサカサするタイプがあります。
なぜ起こるの?
原因が一つに決まっている病気ではありません。乾燥した皮膚に起こりやすく、ひっかき傷、虫刺され、やけどなどをきっかけに始まることがあります。
アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、うっ滞性皮膚炎などが背景にある場合もあります。また、病変に細菌感染を伴って悪化することがあります。
症状
- 数cm程度の丸い・楕円形の赤い湿疹
- 強いかゆみ
- 皮むけ・かさぶた
- じゅくじゅくして汁が出る
- 複数の病変が同時に出る
- 治ったように見えて再び悪化する
とくに下腿に多くみられますが、腕や体幹などにもできます。
たむし(体部白癬)との違い
| 貨幣状湿疹 | 体部白癬 | |
|---|---|---|
| 形 | コイン状に赤く、全体が湿疹になることが多い | 外側が盛り上がり、中心がやや落ち着く環状病変が典型 |
| かゆみ | 強いことが多い | かゆみを伴うことがある |
| 検査 | 必要に応じて他疾患を除外 | KOH直接鏡検で真菌を確認 |
| 治療 | ステロイド外用・保湿など | 抗真菌薬 |
見た目だけでは区別しにくいことがあります。白癬を疑う場合は、皮膚の一部を採ってKOH直接鏡検を行います。
治療
1 ステロイド外用薬
炎症をしっかり抑えることが治療の中心です。病変の部位・厚さ・炎症の強さに応じて、適切な強さのステロイド外用薬を使います。
2 保湿
乾燥が背景にあることが多いため、保湿剤で皮膚のバリアを整えます。症状が落ち着いた後も乾燥対策を続けることで再燃を減らせることがあります。
3 かゆみへの治療
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬などを併用することがあります。掻き壊すことで炎症と感染がさらに悪化するため、睡眠を妨げるほどのかゆみは我慢しすぎない方がよいでしょう。
4 感染を伴う場合
黄色いかさぶた、膿、痛みなどがある場合は細菌感染を合併している可能性があります。必要に応じて抗菌薬を追加します。
なかなか治らないときに見直すこと
- 実は白癬ではないか
- 接触皮膚炎が加わっていないか
- 下腿のむくみ・静脈うっ滞が背景にないか
- 細菌感染を合併していないか
- 薬を塗る量・範囲・期間が足りているか
貨幣状湿疹が強く悪化すると、離れた部位にも湿疹が広がる自家感作性皮膚炎を起こすことがあります。
こんなときは皮膚科を受診してください
- 丸い湿疹が増えてきた
- 市販の水虫薬や湿疹薬で改善しない
- じゅくじゅく・膿・強い痛みがある
- かゆみで眠れない
- 急に全身へ湿疹が広がった
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 丸いからといって、最初から貨幣状湿疹と決めません
体部白癬とかなり似ることがあります。少しでも疑えばKOH直接鏡検をして、真菌がいないことを確認してから湿疹治療を進めます。
2 強い炎症を弱い薬で長引かせません
赤み・厚み・かゆみが強い貨幣状湿疹は、必要な強さのステロイド外用薬で早めに炎症を抑えます。少量をだらだら塗るより、十分量を適切な期間使うことが大切です。
3 下腿に繰り返すなら、むくみやうっ滞も見ます
足に何度も再発する場合は、皮膚だけでなく浮腫や静脈うっ滞が背景にないか確認します。原因が残っていれば外用だけでは再発しやすくなります。
4 治りにくいときは診断を固定しません
白癬、接触皮膚炎、感染などが混ざっていないかを見直します。「貨幣状湿疹だから薬を強くする」だけで追いかけないようにします。
まとめ
貨幣状湿疹は、コイン状の赤い湿疹ができ、強いかゆみを伴うことが多い病気です。乾燥や皮膚への刺激がきっかけになり、ステロイド外用薬と保湿を中心に治療します。
ただし、体部白癬など似た病気があるため、丸い形だけで自己診断せず、治りにくい場合は皮膚科で原因を確認してください。
参考文献・情報源
医学情報の確認日:2026年10月20日。
