「ステロイドを塗ると良くなる。でもやめると、また同じ場所が悪くなる」——アトピー性皮膚炎では、とてもよくある経過です。
こうした同じ部位で再燃を繰り返す湿疹に対して行うのが、プロアクティブ療法です。
最初に知ってほしいこと
プロアクティブ療法は、「湿疹が残っているのに塗る回数だけ減らす治療」ではありません。まず急性期の炎症をしっかり落ち着かせ、その後、再燃しやすい場所にステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などを週2回程度、間欠的に使って良い状態を維持する治療です。
プロアクティブ療法とは?
アトピー性皮膚炎では、見た目がきれいになっても、同じ場所に湿疹を繰り返すことがあります。
プロアクティブ療法は、急性期治療で湿疹を十分に改善させたあと、保湿剤によるスキンケアに加えて、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を週2回程度などの間隔で塗り、再燃を予防する方法です。
日本皮膚科学会・日本アレルギー学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」では、プロアクティブ療法は推奨度1・エビデンスレベルAで、湿疹病変の寛解維持に有用で比較的安全性の高い治療として位置づけられています。
「症状が出たら塗る」治療との違い
皮膚炎が悪化したときだけ抗炎症薬を使う方法は、リアクティブ療法と呼ばれます。
再燃が少ない部位では、この方法で十分なこともあります。
一方で、首、肘の内側、膝の裏など、いつも同じ場所に湿疹を繰り返す場合には、「悪くなってから塗る」を繰り返すだけではコントロールしにくいことがあります。
そこで、いったん皮膚を十分にきれいにしたあとに、再燃しやすい場所へ抗炎症外用薬を間欠的に続けるのがプロアクティブ療法です。
なぜ見た目が良くなっても塗るの?
アトピー性皮膚炎では、見た目に赤みがなくなっても、皮膚の中には炎症が残っていることがあります。
ガイドラインでも、一見正常に見える皮膚でも組織学的には炎症細胞が残っている場合があり、そこへ刺激が加わると再び湿疹が起こりやすいことが説明されています。
つまり、「見た目が治った=炎症が完全にゼロ」ではないことがあるということです。
プロアクティブ療法は、その残っている炎症を抑えながら、再燃を減らす考え方です。
いつプロアクティブ療法へ切り替える?
ここがとても重要です。
プロアクティブ療法へ移るのは、皮膚炎が十分に改善してからです。
ガイドラインでは、かゆみや赤みがなく、触っても皮膚の盛り上がりがほとんどない状態まで改善してから、連日塗布から間欠塗布へ移行することが重要とされています。
まだ赤い、かゆい、ザラザラしている、掻き壊している状態で、単純に「毎日から週2回へ減らす」のはプロアクティブ療法とは少し違います。
まず十分に炎症を落ち着かせる。そのあとに維持療法へ移る。この順番が大切です。
実際にはどれくらいの頻度で塗る?
代表的なのは週2回程度の間欠塗布です。
たとえば「月曜と木曜」など、忘れにくい曜日を決めて使う方法もあります。
ただし、全員が同じ回数・同じ期間でよいわけではありません。どの部位に、どの強さの薬を、どのくらいの期間使うかは、これまでの再燃の頻度や皮膚の状態、年齢、部位によって調整します。
保湿剤は、プロアクティブ療法中も基本的に継続します。
ステロイドを週2回続けても大丈夫?
「症状がないのにステロイドを塗り続けるのが怖い」と感じる人は少なくありません。
ただ、プロアクティブ療法は、強いステロイドを毎日ずっと使い続ける治療ではありません。
ガイドラインでは、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を用いたプロアクティブ療法について、再燃予防に有用であり、一定の観察期間では比較的安全性の高い方法とされています。
もちろん、塗る場所・強さ・期間が不適切なら副作用のリスクはあります。そのため、自己判断で漫然と続けるのではなく、皮膚の状態をみながら調整することが大切です。
ステロイド外用薬との付き合い方については、「アトピー治療でステロイドを怖がりすぎてほしくない理由」でも詳しく解説しています。
タクロリムス軟膏を使うこともあります
プロアクティブ療法には、ステロイド外用薬だけでなく、タクロリムス軟膏を使うこともあります。
特に顔や首など、長期的にステロイドの使い方を慎重に考えたい部位では、選択肢になります。
一方、塗り始めにヒリヒリ感やほてりを感じることもあるため、皮膚炎が強い状態からいきなり使うより、まず炎症をある程度落ち着かせてから使うことがあります。
子どものアトピーでも使う?
子どものアトピー性皮膚炎でも、同じ場所に再燃を繰り返す場合にはプロアクティブ療法を考えます。
特に、夜にかゆくて眠れない、掻き壊しを繰り返す、塗り薬をやめるたびにすぐ悪化する場合には、炎症を十分に抑えたうえで維持療法を考えることが重要です。
ただし、年齢や部位に応じて使える薬や強さが異なるので、子どもほど「どこに何を塗るか」を具体的に決めることが大切です。
それでも繰り返すなら、外用治療だけにこだわらない
適切な強さ・量・期間で外用治療を行い、プロアクティブ療法まで行っているのに、広い範囲で炎症が続く場合には、治療を見直す必要があります。
中等症〜重症のアトピー性皮膚炎では、生物学的製剤やJAK阻害薬など、外用治療以外の選択肢があります。
「塗り薬が足りないのか」「塗り方がうまくいっていないのか」「そもそも外用治療だけでは抑えきれない重症度なのか」を分けて考えることが重要です。
生物学的製剤については、「アトピーでデュピクセントを考えるのはどんなとき?」も参考にしてください。
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 まず急性期の炎症を中途半端に残さないことを優先します
赤みやかゆみが残っているのに、ステロイドが怖いからと早く減らしすぎると、すぐ再燃して結果的に何度も塗ることになります。まず必要な強さ・量でしっかり炎症を落ち着かせることが大切です。
2 同じ場所に繰り返すなら、症状がない時期の治療を考えます
毎回「悪くなったら塗る」だけで同じ場所を繰り返すなら、皮膚がきれいになったあとも週2回程度の間欠塗布を続けるプロアクティブ療法を考えます。
3 「薬を減らすこと」ではなく「再燃を減らすこと」が目的です
塗る回数を減らすこと自体がゴールではありません。良い状態を長く保ち、かゆみや掻き壊し、睡眠への影響を減らすことを目標にします。
4 外用をきちんとやっても抑えられないなら、次の治療を考えます
特に子どもで夜眠れないほどかゆい、広範囲に炎症が続くなど生活への影響が大きい場合は、外用薬だけを長く繰り返すことにこだわらず、生物学的製剤なども含めて治療を見直します。
最後に:良くなったあとをどう維持するかが大切です
アトピー性皮膚炎では、症状が悪いときに治療することだけでなく、良くなった皮膚をどう維持するかがとても重要です。
プロアクティブ療法は、再燃を繰り返す人にとって、そのための有力な方法の一つです。
ただし、皮膚炎が残っている状態で回数だけ減らすのではありません。まず十分に改善させ、その後に適切な薬を適切な頻度で続ける。この順番が大切です。
アトピー性皮膚炎全体の治療については、「アトピー性皮膚炎とは?症状・原因・治療」もご覧ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「プロアクティブ療法とはどのような治療法ですか?」
- Saeki H, et al. English version of clinical practice guidelines for the management of atopic dermatitis 2024. J Dermatol. 2025.
- Sidbury R, et al. Guidelines of care for the management of atopic dermatitis in adults with topical therapies. J Am Acad Dermatol. 2023.
