ニキビ跡は全部同じではありません|赤み・クレーターの種類で治療が変わる理由

ニキビ跡は全部同じではありません|赤みとクレーターの違い

ニキビが治ったのに、肌が元に戻らない。

赤みが残る。茶色い跡が残る。凹みが気になる。

こうした状態を、ひとまとめに「ニキビ跡」と呼ぶことが多いと思います。

でも実際には、ニキビ跡は全部同じではありません。

赤みなのか。色素沈着なのか。盛り上がった瘢痕なのか。それともクレーターなのか。

この違いによって、考えるべき治療は大きく変わります。

だから僕は、「ニキビ跡を治したい」という相談を受けたとき、いきなり治療機器の話から始めることはしません。

まずは、そのニキビ跡が何なのかを見極めることから始めます。
目次

ニキビ跡には、いくつかの種類があります

一般に「ニキビ跡」と呼ばれているものには、主に次のようなものがあります。

  • 赤み
  • 炎症後色素沈着
  • 盛り上がった瘢痕
  • 萎縮性瘢痕、いわゆるクレーター

赤みは、炎症が治まったあとに血管の変化が残って見える状態です。茶色い跡は、炎症後色素沈着であることが多く、盛り上がるタイプは肥厚性瘢痕やケロイドに近い反応です。

そして、多くの人が特に気にするのが、凹んで見えるクレーターです。今回はこの中でも、特に相談が多い赤みとクレーターを中心に解説します。

赤みは「跡」であると同時に、炎症の延長であることがあります

ニキビ後の赤みは、時間とともに自然に薄くなることもあります。ただ、長く残る赤みでは、炎症のあとに続く血管の拡張や血管成分の変化が関わり、自然にはなかなか改善しないこともあります。

その場合、僕はVbeamを使うことが多いです。

Vbeamは595nmのパルス色素レーザーで、血管を標的にするレーザーです。ニキビ後の赤みに対しては、有力な治療選択肢の一つだと考えています。ただし、肌の状態や赤みの原因、出力などによって反応は異なり、すべての赤みに同じように用いるわけではありません。

ここで大切なのは、赤みだけを見て終わらないことです。

もし今も新しいニキビができているなら、赤みを治療しても、また新しい炎症が起こって跡が増えてしまいます。だから僕は、必要に応じてVbeamを考える一方で、ディフェリンゲルやベピオゲルなどを用い、ニキビそのものをできるだけ作らない治療も大切だと考えています。

残った赤みを治療することと、新しい赤みを作らないこと。
ニキビ跡の治療では、この両方を考える必要があります。

色素沈着は、赤みともクレーターとも違います

茶色く残るタイプは、炎症後色素沈着であることが多いです。これは赤みとは原因が違い、クレーターとも別の状態です。

時間とともに改善することもありますが、紫外線や摩擦などで長引くことがあります。そのため、遮光やスキンケアを含めた基本的な管理も大切です。

赤いのか、茶色いのか、凹んでいるのかによって治療の入口が変わるため、まず状態を分けて考えます。

盛り上がった瘢痕は、クレーターとは逆の方向の瘢痕です

ニキビ跡の中には、凹むのではなく盛り上がるタイプもあります。肥厚性瘢痕やケロイドに近い反応で、クレーターとは治療の考え方がまったく違います。

詳しい治療は別の記事で扱いますが、「ニキビ跡」という言葉の中には、このような別のタイプも含まれていることを知っておいてほしいと思います。

クレーターは、さらに形で分けて考える必要があります

ここがこの記事の中心です。

クレーターは全部同じように見えても、実際には形と皮膚の下の構造が違います。代表的なのは、rolling scar、boxcar scar、ice pick scarです。

種類 見た目の特徴 治療で考える構造 主な選択肢
rolling scar なだらかにうねるような凹み 皮膚の下の線維性癒着 サブシジョン、CO2フラクショナル、ジェット注入など
boxcar scar 輪郭が比較的はっきりした丸い、または四角い凹み 凹みの底と急な辺縁 サブシジョン、CO2フラクショナル、形に応じた辺縁の処理など
ice pick scar 細く深い、針で刺したような凹み 狭く深く入り込む瘢痕 TCA CROSS、パンチによる処置など

この3つは見た目も構造も違います。実際には複数の型が同じ顔に混在していることも多いため、一つの治療だけで全部を同じように治すのが難しいことがあります。

rolling scarでは、まず「癒着」を考えます

rolling scarは、なだらかにうねるように凹むタイプです。皮膚の下で瘢痕組織が癒着し、表面を下へ引っ張っていることがあります。

そのため僕は、rolling scarではサブシジョンを重要な選択肢として考えます。サブシジョンは、針などを用いて皮膚の下の線維性組織を切り離し、引きつれを解除する治療です。適応やダウンタイムは、「サブシジョンとは?|ローリング型ニキビ跡に向く治療を皮膚科医が解説」で詳しく解説しています。

必要に応じて、CO2フラクショナルレーザーやキュアジェット系の治療を組み合わせることもあります。

rolling scarでは、表面に強い治療を重ねる前に、
まず下から引っ張っている構造をどう解除するかを考えます。

boxcar scarは、辺縁の扱いが大切です

boxcar scarは、比較的はっきりした輪郭をもつ丸い、または四角い凹みです。rolling scarよりも縁が急で、「穴」として見えやすいのが特徴です。

僕はboxcar scarでも、形に応じてサブシジョンやCO2フラクショナルレーザーを使うことがあります。ただ、底を持ち上げることだけではなく、急な辺縁が影をつくって目立っている場合には、CO2レーザーで縁を少し削り、段差をなだらかにする工夫をすることもあります。

これは医学的に唯一の正解という意味ではありません。実際の診療で瘢痕の深さや縁の形を見ながら、僕が選択肢の一つとして考えている方法です。

ice pick scarは、深く細いので治療法が変わります

ice pick scarは、表面の入口は小さくても、皮膚の深いところまで細く入り込む、針で刺したような凹みです。

この形では、顔全体に広く熱を入れる治療だけでは十分に改善しにくいことがあります。そのため僕は、TCA CROSSや、必要に応じてパンチで瘢痕をくり抜くような処置を考えることがあります。

ice pick scarでは、深く細い瘢痕そのものをどう処理するかが大切です。rolling scarやboxcar scarと同じ考え方だけでは不十分なことがあります。

キュアジェット系の治療は、どんな位置づけか

針を使わず、空気圧などを利用して薬剤を皮膚へ届けるneedle-free pneumatic injectionやjet injectionは、萎縮性ニキビ跡に対する治療として研究されています。

日本人を対象にした比較試験では、rolling scarで改善が目立ったと報告されています。また、空気圧による生理食塩水注入とサブシジョンを比較した小規模研究では、どちらもrolling scarとboxcar scarで改善がみられました。

僕自身も、rolling scarなどでキュアジェット系の治療を選択肢として考えることがあります。

ただし、これだけですべてのニキビ跡が治るという意味ではありません。研究規模はまだ大きくなく、クレーターの形によって反応も異なります。癒着、深さ、辺縁などを見ながら組み合わせる治療の一つとして位置づけています。

キュアジェットは製品名です。ここでは、製品の宣伝ではなく、needle-free pneumatic injectionやjet injectionという治療方法の医学的な位置づけとして説明しています。

一番強い機械を顔全体に当てればいい、わけではありません

ニキビ跡治療というと、「とにかく強い治療を受ければよい」と思われることがあります。

でも実際には、赤みなら血管、rolling scarなら皮膚の下の癒着、boxcar scarなら凹みの底と縁、ice pick scarなら狭く深い瘢痕というように、治すべき構造が違います。

顔全体に強い熱を入れるだけでは、癒着が残ったままになることもあります。深い穴に十分届かないこともあります。逆に、赤みに対してクレーターと同じ治療をしても、目的が合っていません。

だから僕は、「ニキビ跡」という言葉だけで治療法を決めるのではなく、一つ一つの瘢痕の形を見て、必要な治療を組み合わせることが大切だと考えています。

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 まず、何のニキビ跡なのかを分けて考える

赤みなのか。色素沈着なのか。盛り上がった瘢痕なのか。クレーターなのか。

僕はまずここを分けて考えます。同じ「ニキビ跡」と呼ばれていても、治療はまったく違うからです。

2 赤みにはVbeamをよく使います

赤みが長く残るタイプでは、Vbeamが有力な選択肢になります。

ただし、赤みだけを消そうとしても、新しいニキビができ続ければまた跡が増えてしまいます。だから僕は、Vbeamに加えて、ディフェリンゲルやベピオゲルなどでニキビそのものをできるだけ作らないことも大事だと考えています。

3 rolling scarでは、まず癒着をどう解除するかを考えます

rolling scarでは、皮膚の下の癒着が目立ちやすさの原因になっていることがあります。

そのため、僕はサブシジョンを中心に考え、必要に応じてCO2フラクショナルやキュアジェット系の治療を組み合わせます。

4 boxcar scarでは、縁まで見て治療を考えます

boxcar scarでは、凹みの縁が急であること自体が目立ちやすさにつながります。

そのため、サブシジョンやCO2フラクショナルに加えて、形によってはCO2レーザーで辺縁を少し削ってなだらかにすることもあります。ここは瘢痕の形を見ながら判断します。

5 ice pick scarは、別の考え方が必要です

ice pick scarは深く細いので、広く熱を入れる治療だけでは改善しにくいことがあります。

僕はTCA CROSSや、必要に応じてパンチによる処置を考えます。

6 ニキビ跡治療は、組み合わせで考えることが多いです

一つの治療だけですべてを解決できるとは限りません。

赤み、活動性のニキビ、癒着、瘢痕の深さや形。それぞれを見ながら、必要な治療を組み合わせることが大切だと考えています。

ニキビ跡治療は、
「一番強い機械を顔全体に当てる治療」
ではありません。

赤みなのか。
癒着なのか。
深い穴なのか。

治すべき構造を見て、
治療を変えることが大切です。

だから僕は、まず「何のニキビ跡なのか」を見極めてから、必要な治療を組み合わせます。

ニキビ跡治療で、もう一つ大切なこと

ニキビ跡の治療というと、今ある跡だけに目が向きがちです。

でも、今もニキビができ続けているなら、新しい跡が増えていきます。だから僕は、「跡を治療すること」と同時に、「新しい跡を作らないこと」も大事だと考えています。

ディフェリンゲルやベピオゲルなどに用いられるアダパレンや過酸化ベンゾイルは、活動性のニキビに対する基本的な外用治療であり、炎症が軽快したあとの寛解維持にも用いられます。

日本人の患者さんを対象にした研究でも、アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合ゲル、または過酸化ベンゾイルゲルを用いた維持療法は、無治療と比べてニキビの再燃を抑え、萎縮性瘢痕の増加を防ぐ可能性が示されています。

ただし、外用薬には刺激症状が出ることもあり、どの薬をどのように使うかは肌の状態に合わせて調整します。

まとめ

ニキビ跡は全部同じではありません。

赤み、色素沈着、盛り上がる瘢痕、クレーターでは、治療が違います。さらにクレーターも、rolling scar、boxcar scar、ice pick scarで治療方針が変わります。

赤みならVbeamが有力な選択肢になります。ただしそれだけでなく、ディフェリンゲルやベピオゲルなどで、新しいニキビをできるだけ作らないことも大切です。

rolling scarではサブシジョンを中心に、CO2フラクショナルやキュアジェット系治療を組み合わせることがあります。boxcar scarでは、それに加えて辺縁の処理を考えることがあります。ice pick scarでは、TCA CROSSやパンチによる処置を検討します。

僕が大切にしているのは、「何のニキビ跡かを見極めること」、そして「必要な治療を組み合わせること」です。

ニキビ跡は、
一つの言葉でまとめられても、
実際には全部同じではありません。

だからこそ、
まず見極めることが、
遠回りに見えて一番の近道になると僕は考えています。

参考文献・参考資料

現在も新しいニキビが出続けている方へ
ニキビ跡の治療よりも、まず新しいニキビを止めることが大切です。
ニキビは皮膚科でどう治す?|跡を残さないために、僕が最初に考えること →
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
プロフィールを見る →

目次