肝斑はレーザーで悪化する?|僕が焦ってレーザーをしない理由

肝斑はレーザーで悪化する?|僕が焦ってレーザーをしない理由

「肝斑があるから、レーザーはできません」

そう説明されたことがある人もいるかもしれません。

逆に、「肝斑にはレーザートーニングがいい」と聞いたことがある人もいると思います。

では、肝斑にレーザーは良いのでしょうか。それとも悪いのでしょうか。

僕の考えは、どちらか一方ではありません。

肝斑はレーザーで悪化することがあります。一方で、レーザーを含む機器治療によって改善する場合もあります。

大切なのは、「肝斑だからレーザーをするか、しないか」という二択ではなく、

「今、この肝斑に何をするべきなのか」

を考えることです。

僕自身、肝斑が目立つ状態の患者さんに、最初から焦ってレーザーを当てることはほとんどありません。

まず肝斑を落ち着かせる。そのうえで必要な治療を考える。この順番を大切にしています。

目次

まず、本当に肝斑なのかを診断する

肝斑は、主に頬などに左右対称に広がる褐色の色素斑です。

ただし、実際の顔を見ると、肝斑だけが単独で存在しているとは限りません。肝斑の上や周囲に老人性色素斑が混在していることもあれば、ADMや炎症後色素沈着が重なっていることもあります。

そのため、「頬が茶色いから肝斑」と単純に決めることはできません。

第1号記事でも書いたように、僕はシミ治療では、治療機器を選ぶ前に診断することを大切にしています。詳しくは「シミは全部同じではありません|治療前に『診断』が大切な理由」で解説しています。

肝斑はなぜ治療が難しいのか

肝斑は、単純に「表皮にメラニンが増えているだけ」の病気ではないと考えられるようになっています。

紫外線などの影響に加えて、メラノサイトだけでなく、基底膜の変化、真皮の光老化、線維芽細胞の変化、血管系の変化など、複数の要因が関与していることが報告されています。

だからこそ、一度色が薄くなっても再燃しやすく、治療を続けている間は良くても、治療をやめるとまた目立ってくることがあります。

肝斑は、「一度取れば終わり」というタイプのシミとは少し性質が違います。

僕はまず、肝斑を落ち着かせることから始めます

僕が肝斑を診るとき、最初から強いレーザーを当てようとは考えません。

まず大切なのは遮光です。紫外線だけではなく、日常的な光への対策も含め、肝斑を悪化させる刺激をできるだけ減らすことを考えます。

そのうえで、患者さんの状態に応じて内服や外用などの保存的治療を行います。僕自身は、必要な場合にはトラネキサム酸やビタミンC製剤などを用いることがあります。

トラネキサム酸については、複数のランダム化比較試験やメタ解析で肝斑の改善効果が報告されています。ただし、誰にでも気軽に使ってよい薬という意味ではありません。

トラネキサム酸の国内での位置づけ

医療用トラネキサム酸製剤を医師が肝斑治療目的で処方する場合、日本では承認された効能・効果に肝斑が含まれておらず、適応外使用となります。

一方で、一般用医薬品には「しみ(肝斑に限る)」を効能として承認されたトラネキサム酸含有製品があります。

血栓症のある患者さんや血栓症が起こるおそれのある患者さんなどでは注意が必要です。既往歴や服薬状況などを確認したうえで、医師が使用の適否を判断することが重要です。

焦ってレーザーを当てると、肝斑が悪化することがあります

老人性色素斑であれば、Qスイッチルビーレーザーなどのスポット照射が非常に良い治療になることがあります。

しかし、同じ考え方で肝斑に強いレーザーを照射すると、炎症によって色素沈着が強くなり、肝斑が悪化することがあります。

そのため、「シミだから、とりあえずレーザーで取る」という治療は肝斑には向きません。

僕が患者さんに「今はレーザーをしない方がいいと思います」と説明することがあるのは、このためです。

治療をしないのではありません。今はレーザーをするタイミングではない、と判断しているのです。

肝斑があると、老人性色素斑のレーザーもできないのか

ここは患者さんからよく聞かれるところです。

肝斑があるからといって、顔にあるすべての老人性色素斑を永遠にレーザー治療できないわけではありません。実際には、肝斑と老人性色素斑が同じ顔に混在していることは珍しくありません。

僕の場合、まず肝斑をできるだけ落ち着かせます。そのうえで、「ここは肝斑」「ここは老人性色素斑」と病変を見極めながら、必要であれば老人性色素斑に対してQスイッチルビーやピコスポットなどを使います。

つまり、「肝斑があるかどうか」だけではなく、「どこに肝斑があって、どこに別のシミがあるのか」を考えることが重要です。

レーザーの使い分けについては「Qスイッチルビー・ピコレーザー・IPL|シミ取りは結局どれを選ぶ?」で詳しく解説しています。

レーザートーニングについて、僕はどう考えているか

肝斑に対して低フルエンスのQスイッチNd:YAGレーザーを繰り返し照射する、いわゆるレーザートーニングが行われることがあります。

レーザートーニングで肝斑が薄くなること自体は、複数の研究で報告されています。ですから、「レーザートーニングは全く効かない」とは僕も考えていません。

一方で、僕自身は肝斑に対してレーザートーニングを漫然と繰り返す治療には否定的です。

理由の一つは、治療をしている間は改善しても、その効果が時間とともに弱くなることがあるからです。さらに、PIHだけでなく、点状・まだら状の色素脱失や白斑様の変化が生じることも報告されています。

システマティックレビューとメタ解析でも、低フルエンスNd:YAGレーザートーニングによる改善が示されている一方、色素脱失、PIH、再燃などが報告され、色素脱失は照射回数との関連も示されています。

そのため僕は、「弱いレーザーだから安全なので、ずっと続ければいい」という考え方はしていません。

一時的に色を薄くすることだけではなく、その人の肝斑を長期的にどうコントロールするかを考えたいからです。

レーザートーニングを完全に否定しているわけではありません

ここは誤解がないようにお伝えしたいところです。

医学的エビデンス
レーザートーニング自体には、肝斑の改善効果を示す研究があります。患者さんの状態や、ほかの治療との組み合わせによって選択肢になることがあります。

僕自身の診療方針
僕が否定的なのは、「肝斑なら、とりあえず毎月レーザートーニングを続ける」というような漫然とした治療です。第一選択として積極的に何度も繰り返す治療にはしていません。

有効性が報告されていることと、すべての患者さんに同じ治療を長く続けることは別です。僕は、改善だけでなく、長期的な再燃や色素脱失などまで含めて治療を考えます。

最近注目しているのは、ニードルRFです

肝斑の治療で、僕が最近注目しているものの一つがニードルRFです。

ニードルRFは、細い針を皮膚に挿入し、針を通して真皮に高周波エネルギーを与える治療です。

これまでの肝斑治療は、「増えたメラニンをどう減らすか」という考え方が中心になりがちでした。しかし最近では、肝斑の背景にある真皮の光老化や線維芽細胞、基底膜などの変化にも注目されています。

ニードルRFは、メラニンそのものを強く破壊するのではなく、真皮を標的として皮膚の環境をリモデリングすることで、肝斑にアプローチできる可能性があります。

ニードルRFにはどのくらいエビデンスがあるのか

新しい治療だから優れている、と単純に考えることはできません。現時点の研究を、規模や限界も含めて見る必要があります。

2024年にScientific Reportsに掲載された研究では、肝斑患者にトラネキサム酸内服とトリプルコンビネーションクリームによる治療を行って一度改善させたあと、ランダムに選んだ顔半分だけにニードルRFを継続しました。

従来治療を終了したあと、ニードルRFを続けた側では改善が維持される一方、無治療側では再び色調が悪化する傾向がみられました。

ただし、この研究は15人が登録され、研究を完遂したのは11人という小規模な研究です。この一つの研究だけで、ニードルRFが肝斑の標準治療だと結論づけることはできません。

さらに2026年には、2014年から2025年までの肝斑に対するニードルRF研究12報をまとめたシステマティックレビューが報告されています。

MASIやmMASI、メラニン指数の改善が複数の研究で報告され、真皮の老化関連変化や基底膜に関する組織学的改善も示されています。PIHについても比較的良好な安全性が報告されています。

一方で、対象患者数が少ない研究が多く、機器が統一されていません。針の深さやRF出力などの設定も異なり、ほかの治療を併用した研究も多いという問題があります。

現時点では「肝斑に対する有望な新しい選択肢」とは言えても、「肝斑ならニードルRFが第一選択」とまで断定する段階ではないと僕は考えています。

ニードルRFなら肝斑が悪化しない、という意味でもありません

ニードルRFはレーザーとは異なる方法で真皮を標的にしますが、皮膚に針と熱エネルギーを加える治療です。

すべての患者さんに安全で、必ず肝斑が改善するという意味ではありません。

機種、針の深さ、出力、患者さんの肌状態などによって反応は異なります。

現時点では、適切な患者さんを選んだうえで行う追加治療の一つとして考えるべきです。

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 まず、本当に肝斑なのかを見る

肝斑だと思っている色素斑の中に、老人性色素斑やADMなどが混在していないかを考えます。

治療方法を決めるのは、その後です。

2 肝斑が目立つなら、まず落ち着かせる

僕は、肝斑が強い状態で焦ってスポットレーザーを当てることはしません。

遮光を基本に、必要に応じて内服や外用などの保存的治療を行います。

3 レーザートーニングを漫然と繰り返さない

レーザートーニングで一時的に改善することはあります。

ただし僕自身は、「肝斑だから毎月トーニング」という治療には否定的です。長期的な再燃や色素脱失などまで含めて考えます。

4 肝斑が落ち着いたら、混在するシミを治療する

老人性色素斑が残っていれば、その病変を見極めたうえでQスイッチルビーやピコスポットなどを検討します。

5 治りにくい肝斑では、真皮へのアプローチも考える

保存的治療だけでは十分でない場合や再燃を繰り返す場合には、ニードルRFのような真皮を標的とした治療も、今後重要な選択肢になる可能性があると考えています。

ただし、まだエビデンスが十分に確立した標準治療として扱うのではなく、患者さんの状態を見ながら慎重に選択します。

「早く消したい」からこそ、
急いでレーザーをしないことがあります。

肝斑は、
何を当てるかだけでなく、
いつ治療するかが大切です。

最近は、メラニンだけではなく、肝斑の背景にある真皮まで治療するという考え方にも注目しています。

肝斑は治療して終わり、ではありません

肝斑は再燃しやすい病気です。

治療によって一度きれいになったとしても、紫外線などの影響によって再び目立ってくることがあります。

だから僕は、「何回レーザーをすれば終わりますか?」という質問に、単純に回数だけで答えることはできません。

一度薄くすることだけではなく、再び悪化させないためにどう付き合っていくか。そこまで含めて肝斑治療だと考えています。

まとめ

肝斑に対して、「レーザーは絶対にダメ」というわけではありません。一方で、「肝斑ならレーザーをすればいい」というものでもありません。

まず本当に肝斑なのかを診断する。遮光や保存的治療で落ち着かせる。老人性色素斑などが混在していれば、適切なタイミングでその病変を治療する。

レーザートーニングについては、改善効果があることは認めつつ、漫然と繰り返す治療には慎重になる。

そして近年は、ニードルRFのようにメラニンだけではなく真皮へアプローチする治療も研究されています。

僕が大切にしているのは、「できるだけ早く何かを照射すること」ではありません。

その人の肝斑が今どんな状態なのかを見て、治療する。待つ。治療法を変える。そのタイミングを判断することです。

肝斑では、あえて焦らないことが、結果として一番の近道になることがあります。

それが、僕が肝斑治療で大切にしていることです。

参考文献・参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
プロフィールを見る →

目次