アトピーでデュピクセントを考えるのはどんなとき?

アトピー性皮膚炎でデュピクセントを検討するタイミング、睡眠障害や眼症状、他の生物学的製剤との比較を解説する記事のアイキャッチ画像

『ステロイドを塗っても繰り返す』『かゆくて夜に眠れない』『全身に湿疹が広がって、外用だけでは追いつかない』——アトピー性皮膚炎の治療を続けていても、十分にコントロールできない方はいます。

アトピー性皮膚炎について全体から知りたい方へ アトピー性皮膚炎の総合ガイドを見る →

そうしたときに検討する全身治療の一つが、デュピクセント(一般名:デュピルマブ)です。

デュピクセントは、軽いアトピーに最初から使う薬ではありません。一方で、『何をしてもダメになるまで我慢してから使う最後の手段』でもありません。

この記事では、どんなアトピー性皮膚炎でデュピクセントを考えるのか、どのような薬なのか、効果や副作用、治療開始前に確認したいことを整理します。

目次

結論|外用治療を適切に続けてもコントロールが難しい中等症〜重症例で考えます

日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』では、外用療法で寛解導入や寛解維持が困難な中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して、デュピルマブ皮下注が推奨されています。

大切なのは、『ステロイドを使ったことがあるか』だけではありません。適切な強さの抗炎症外用薬を、必要な量・期間・塗り方で使えているか。それでも皮疹やかゆみが十分に抑えられないかを確認します。

皮疹の広さだけでなく、強いかゆみ、睡眠障害、仕事や学校への影響、繰り返す悪化なども含めて、全身治療を考えるかどうかを判断します。

デュピクセントとは?

デュピクセントは、アトピー性皮膚炎の炎症に関わるIL-4とIL-13というサイトカインの働きを抑える生物学的製剤です。IL-4受容体αを標的とすることで、アトピー性皮膚炎の炎症反応を抑えます。慢性蕁麻疹にも使われるため、アトピー性皮膚炎を合併した蕁麻疹でのゾレアとの使い分けは、「デュピクセントとゾレアは蕁麻疹でどう違う?」で解説しています。

日本では成人だけでなく、現在は生後6か月以上の小児にもアトピー性皮膚炎で使用できます。小児では体重に応じて投与量や投与間隔が決まります。

注射薬ですが、適切な指導を受けたうえで自己注射を行うこともできます。

どんなときにデュピクセントを考える?

1.適切な外用治療をしても十分に良くならない

まず重要なのは、外用治療を十分に行っているかどうかです。

アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用薬やタクロリムス、デルゴシチニブなどの抗炎症外用薬を、皮疹の部位や重症度に合わせて使います。保湿だけで炎症を抑えられるわけではありません。

外用薬を怖がって極端に少量しか使えていない場合には、デュピクセントを始める前に、まず外用治療のやり方を整理することで大きく改善することもあります。

ステロイド外用薬との付き合い方については、『アトピー治療でステロイドを怖がりすぎてほしくない理由』でも解説しています。

2.皮疹が広い、または繰り返し悪化する

広い範囲に湿疹があり、毎日かなりの量の外用薬が必要になる場合や、一度良くなっても短期間で何度も悪化する場合には、外用治療だけで管理し続ける負担が大きくなります。

こうしたケースでは、皮膚全体の炎症を抑える全身治療を組み合わせる意味が出てきます。

3.かゆみや睡眠障害が生活に大きく影響している

アトピー性皮膚炎の重症度は、見た目の皮疹だけでは決まりません。

夜中に何度も目が覚める、無意識に掻き続ける、仕事や勉強に集中できない、といった強いかゆみは生活の質を大きく下げます。皮疹の範囲だけでなく、こうした生活への影響も治療を強める重要な理由になります。

4.外用治療を続けること自体が現実的に難しい

全身に皮疹があり、毎日広い範囲へ外用薬を塗り続けることが大きな負担になっている方もいます。

もちろん注射治療を始めれば外用薬が一切不要になるわけではありません。しかし、全身治療で炎症をしっかり抑えることで、外用治療の負担を減らせることがあります。

保険診療では誰でも使えるわけではありません

デュピクセントの効能・効果は『既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎』です。また、保険診療で使用する際には最適使用推進ガイドラインに沿って、これまでの治療内容や一定の疾患活動性などを確認します。

現在の最適使用推進ガイドラインでは、適切な抗炎症外用薬による治療を行っても十分な効果が得られず、IGA、EASI、病変面積などから一定以上の活動性を有する患者などが対象として整理されています。

『かゆいからすぐデュピクセント』ではなく、診断・重症度・これまでの治療を確認したうえで適応を判断します。

どのくらいで効果が分かる?

デュピクセントでは、かゆみが比較的早い段階から軽くなったと感じる方もいますが、治療効果は数日だけで判断するものではありません。

最適使用推進ガイドラインでは、臨床試験の評価時期を踏まえて投与開始後16週までに治療反応を確認することが示されています。

治療前と治療後で皮疹の範囲や重症度、かゆみ、睡眠などを比較しながら、継続する意味があるかを評価します。

デュピクセントを始めても塗り薬は必要?

必要です。

デュピクセントはアトピー性皮膚炎を『完全に治して、その後は何もしなくてよくする薬』ではありません。皮膚の炎症をしっかり抑えるためには、必要に応じてステロイド外用薬などの抗炎症外用薬を併用し、保湿やスキンケアも続けます。

治療によって皮膚が安定してくれば、外用薬を使う頻度や量を調整していきます。

アトピー性皮膚炎全体の治療については、『アトピー性皮膚炎とは?症状・原因・治療を皮膚科医が解説』も参考にしてください。

主な副作用は?

デュピクセントで特に知っておきたい副作用として、注射部位反応や結膜炎などの眼症状があります。

目の充血、かゆみ、痛み、異物感などが出た場合には、皮膚科だけでなく必要に応じて眼科と連携して対応します。もともと目のかゆみや結膜炎を繰り返している人では、デュピクセントによる眼症状をより意識して治療を選びます。その場合は年齢や国内適応を確認したうえで、イブグリースやアドトラーザなど他の生物学的製剤も選択肢に入れます。ただし、これらの薬でも結膜炎などの眼症状は起こり得るため、眼症状だけで単純に薬を決めるわけではありません。

また、IL-4・IL-13は寄生虫感染に対する免疫にも関与しているため、寄生虫感染がある場合には治療開始前に対応が必要です。

一方で、経口JAK阻害薬とは副作用の種類や事前に確認する項目が異なります。どの全身治療を選ぶかは、年齢、併存症、妊娠・授乳の可能性、注射への抵抗感、通院や自己注射が可能かなども含めて考えます。

治療はいつまで続ける?

『半年で必ず終了』『一度始めたら一生続ける』という薬ではありません。

症状が十分に安定し、抗炎症外用薬や保湿剤を適切に使用しながら一定期間寛解を維持できた場合には、投与を一時中止することを検討する場合があります。一方で、やめると再燃する方もいます。

治療期間は、皮疹の状態、かゆみ、これまでの再燃の仕方、外用治療で維持できるかを見ながら個別に考えます。

費用が心配な場合

デュピクセントは高額な薬剤です。実際の自己負担額は、年齢、体重、投与量、健康保険の自己負担割合などによって異なります。

高額療養費制度などを利用できる場合もあるため、費用だけを見て最初から諦めず、治療適応がある場合には医療機関で具体的な負担額を確認することをおすすめします。

IN PRACTICE

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 『ステロイドが効かない』と言われても、まず塗り方を確認します

適切な強さ、量、塗る範囲、期間で使えていなければ、本当に外用治療で不十分なのか判断できません。全身治療を考える前に、ここは必ず整理します。

2 皮疹の広さだけでなく、かゆみと生活への影響を重視します

夜眠れない、仕事や学校に集中できない、毎日掻き続けてしまう。こうした症状は、見た目の面積だけでは分からない重要な重症度だと思っています。特に小児では、かゆみで睡眠が妨げられる状態が続くと、日中の集中や学校生活への影響が大きくなり、成長への影響との関連も報告されています。適切な外用治療を行っても睡眠障害が続く中等症〜重症例では、僕は全身治療を比較的早めに検討します。

3 外用をきちんと続けても難しいなら、我慢を続ける必要はないと思います

中等症〜重症で、適切な外用治療を続けても十分にコントロールできないなら、デュピクセントを含む全身治療を早めに説明する価値があります。『もっとひどくなるまで待つ』ことが必ずしも良いとは考えていません。

4 注射を始めたら、塗り薬を全部やめるわけではありません

デュピクセントで全体の炎症を下げながら、残っている皮疹には外用治療を組み合わせます。全身治療と外用治療はどちらか一方を選ぶものではありません。

5 デュピクセントだけでなく、他の全身治療も含めて選びます

現在はアトピー性皮膚炎の全身治療にも複数の選択肢があります。特に、もともと目のかゆみや結膜炎が強い人では、デュピクセントを使いにくいと感じることがあるため、年齢や国内適応を確認しながらイブグリースやアドトラーザなども比較します。ただし、他の生物学的製剤でも眼症状は起こり得ます。年齢、併存症、副作用への考え方、投与間隔、内服と注射のどちらが続けやすいかまで含めて、その人に合う方法を考えます。

まとめ

デュピクセントは、適切な外用治療を行っても寛解導入や寛解維持が難しい中等症〜重症のアトピー性皮膚炎で検討する生物学的製剤です。

皮疹の広さだけでなく、強いかゆみ、睡眠障害、繰り返す悪化、毎日の外用負担なども治療選択に影響します。

『塗り薬を使ったことがあるから次は注射』でも、『限界まで我慢してから使う薬』でもありません。まず外用治療を適切に行い、それでも生活に大きな影響が残るなら、全身治療を含めて次の選択肢を考えることが大切です。

参考文献・情報

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AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
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