いんきんたむし(股部白癬)とは?股のかゆみの原因と治療

いんきんたむし(股部白癬)とは?股のかゆみの原因と治療

股の付け根が赤くなって、かゆい。いわゆる「いんきんたむし」を心配して受診する方は少なくありません。

いんきんたむしの正式な病名は股部白癬(こぶはくせん)です。皮膚糸状菌という真菌が、鼠径部や大腿の内側などに感染して起こります。

ただし、股がかゆいからといって、すべてが股部白癬ではありません。湿疹、カンジダ症、間擦疹などもよく似るため、僕は基本的にKOH直接鏡検で真菌を確認してから治療します。

股部白癬そのものは珍しい病気ではありませんが、見た目だけで自己判断すると治療がずれやすい部位でもあります。

目次

いんきんたむし(股部白癬)とは?

股部白癬は、皮膚糸状菌による白癬のうち、外陰部周囲や鼠径部に生じるものです。

日本皮膚科学会の「皮膚真菌症診療ガイドライン2019」では、股部白癬は通常かゆみが強く、境界が比較的はっきりした環状の赤みと鱗屑を伴い、周囲へ広がりながら中心部の炎症が弱くなる「中心治癒傾向」を示すことが多いとされています。

原因菌としてはTrichophyton rubrumなどが代表的です。

どんな症状なら股部白癬を疑う?

典型的には次のような所見がみられます。

  • 鼠径部から大腿内側にかけて赤い発疹が広がる
  • 外側の縁が赤く盛り上がり、カサカサする
  • 輪っか状、または半円状に広がる
  • 中心部は少し落ち着いて見える
  • かゆみが強い
  • 片側から始まり、両側に広がることもある

ただし、ステロイド外用薬を使っていると赤みや鱗屑が一時的に弱くなり、白癬らしい輪郭が崩れることがあります。いわゆるステロイドで修飾された白癬では、見た目だけでの判断がさらに難しくなります。

股がかゆい=いんきんたむしではありません

股部は汗や摩擦の影響を受けやすく、いろいろな皮膚病が似た見た目になります。

病気 特徴の目安
股部白癬 辺縁が赤くカサつき、外側へ広がる。中心治癒傾向を示すことがある
カンジダ性間擦疹 湿った赤みやびらん。周囲に小さな膿疱・衛星病変を伴うことがある
湿疹・かぶれ 摩擦、汗、下着、外用剤などが原因になる。輪郭や広がり方は白癬と異なることがある
間擦疹 皮膚同士がこすれる部位に赤みやヒリヒリ感が出る
紅色陰癬など 細菌感染など別の病気が似た部位に生じることがある

このため、「股が赤いから抗真菌薬」「かゆいからステロイド」と自己判断すると、合っていない治療を長く続けてしまうことがあります。

診断はKOH直接鏡検が基本

僕は股部白癬を疑ったとき、基本的にKOH直接鏡検を行います。

病変のうち、皮膚糸状菌が多いと考えられる活動性の高い辺縁から鱗屑を採取し、水酸化カリウム(KOH)で角質を溶かして顕微鏡で確認します。

白癬では菌糸や分節胞子を確認できます。日本皮膚科学会のガイドラインでも、皮膚真菌症では湿疹や接触皮膚炎など鑑別すべき病気が多く、直接鏡検を行わずに診断すると誤診につながり得ることが強調されています。

KOHは「白癬かどうか」をその場で判断しやすい検査です。菌種まで詳しく調べる必要がある非典型例や難治例では、培養検査などを追加することがあります。

治療は抗真菌薬の外用が基本

限局した股部白癬では、抗真菌薬の外用が基本です。日本皮膚科学会ガイドラインでも、体部・股部白癬に対する外用抗真菌薬は推奨度Aです。

国内では、テルビナフィン、ルリコナゾールなど複数の外用抗真菌薬が股部白癬に保険適用を持っています。製剤によって用法は異なりますが、代表的な薬では1日1回塗布します。

大切なのは、赤い部分だけを点で塗るのではなく、病変の縁とその少し外側まで含めてきちんと塗ることです。

症状が少し良くなったからと自己判断ですぐやめると、菌が残って再燃することがあります。治療期間は病変の広さや経過をみて調整します。

内服治療を考えることもあります

多くは外用治療で対応できますが、次のような場合には抗真菌薬の内服を検討します。

  • 病変が広範囲で外用が難しい
  • 再発を繰り返す
  • 毛包まで感染している可能性がある
  • 外用治療だけでは十分に改善しない

ガイドラインでも、外用が十分に行えない例や再発を繰り返す例では内服療法が推奨されています。

ステロイドだけを塗るとどうなる?

股部の赤みやかゆみにステロイドを塗ると、一時的に炎症が弱くなって「良くなった」ように見えることがあります。

しかし白癬が原因の場合、皮膚糸状菌そのものは残っているため、発疹が広がったり、典型的な形が崩れて診断しにくくなったりします。

もちろん、股部の湿疹にはステロイドが必要な場合もあります。だからこそ、白癬なのか湿疹なのかを先に分けることが重要です。

足の水虫や爪水虫も一緒に確認します

股部白癬を繰り返す人では、足白癬や爪白癬が残っていることがあります。

足や爪に皮膚糸状菌がいると、そこから別の部位へ菌が広がり、治療後に再発する原因になることがあります。

股だけ治療して終わりではなく、足の皮むけ、足指の間の湿り、爪の白濁・肥厚などがあれば同時に確認します。

足白癬については、「水虫は皮膚科でどう治す?|まず“本当に水虫か”を確認する理由」で詳しく解説しています。

日常生活で気をつけること

  • 汗をかいたまま長時間放置しない
  • 入浴後は股部をよく乾かす
  • 蒸れにくい下着・衣類を選ぶ
  • タオルを家族で共用しない
  • 足白癬・爪白癬があれば一緒に治療する
  • 自己判断でステロイドや市販薬を長期間使い続けない

股部は「清潔にしすぎる」ことで刺激性皮膚炎が起こることもあります。強くこすったり、洗浄剤を何度も使ったりする必要はありません。

IN PRACTICE

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 見た目だけで白癬と決めません

股部は湿疹やカンジダなど、白癬に似る病気が多い場所です。僕は基本的にKOHを行い、菌を確認してから抗真菌薬を使います。

2 KOHは「どこから取るか」も大切です

白癬では病変の中心より、赤みや鱗屑が目立つ活動性の高い辺縁に菌が多いことがあります。検体採取部位を意識しないと偽陰性になることがあります。

3 足や爪も一緒に見ます

股部白癬だけ治しても、足白癬や爪白癬が残っていると再発の原因になります。股だけでなく、感染源になり得る部位まで確認します。

4 「かゆいからステロイド」は避けたいです

湿疹ならステロイドが有効ですが、白癬では見た目を変えて診断を難しくすることがあります。まず診断をつけてから治療を分けることが、遠回りしない一番の方法です。

まとめ

いんきんたむし(股部白癬)は、皮膚糸状菌が股部に感染して起こる白癬です。

典型例では輪状に広がる赤みとかゆみを認めますが、湿疹やカンジダなど似た病気も多いため、見た目だけで決めつけないことが大切です。

僕は基本的にKOH直接鏡検で真菌を確認してから治療します。診断がつけば、外用抗真菌薬を中心に治療し、再発を繰り返す場合には足白癬や爪白癬など感染源も含めて確認します。

参考文献

医療情報確認日:2026年10月21日

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AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
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