その足、本当に水虫ですか?
その足、本当に水虫ですか?
足の裏や指の間の皮むけ、かゆみがあると、多くの方が「水虫かもしれない」と考えます。実際、足白癬はとても多い病気です。体や腕・脚に輪っか状の発疹が広がる場合は、たむし(体部白癬)も考えます。
ただ、僕が外来で診ていると、水虫だと思って受診された方の中に、実際には汗疱(かんぽう)や異汗性湿疹だった、という方が一定数いらっしゃいます。
逆に、本当に足白癬なのに、ほとんどかゆみがないという方も少なくありません。「水虫=かゆい」という思い込みは、正しくありません。
僕は見た目だけで「水虫ですね」とは言いません。見た目だけでは、水虫か、そうでないかを正確に区別できないことがあるからです。
僕は必ずKOH検査をしてから治療します
足白癬を疑ったとき、僕は必ずKOH検査(直接鏡検)を行ってから治療方針を決めます。
KOH検査とは、皮膚の表面の角質をごく少量採り、KOH(水酸化カリウム)の液で処理してから顕微鏡で観察する検査です。角質を溶かすことで、白癬菌の糸状の構造(菌糸)が見えやすくなります。
- 皮膚の表面を少し採るだけで、痛みはありません
- その場で処理して、数分で結果が分かります
- 「菌がいる」か「菌がいない」かを、その場でお伝えします
日本皮膚科学会・日本医真菌学会の皮膚真菌症診療ガイドライン2025でも、直接鏡検(KOH法)は「迅速かつ確実な診断法」と位置づけられており、この検査によってすぐに治療を始められるとされています。見た目だけで「水虫」と決めつけず、まず検査で確認するというのが、標準的な診断の考え方です。
実際の診療でも、水虫だと思って来られた方を検査してみると、白癬菌が見つからず、汗疱や湿疹だった、ということはよくあります。
市販の水虫薬を先に使ってほしくない理由
そもそも水虫ではないことがある
先ほど触れたように、水虫だと思っていても、実際には汗疱や湿疹などほかの病気であることがあります。この場合、水虫の薬を塗っても良くなりませんし、かえって刺激になることもあります。
市販薬でかぶれることがある
市販の水虫薬でかぶれてしまう患者さんも、実際にいらっしゃいます。抗真菌薬の成分や基剤に対して接触皮膚炎を起こすことがあり、これは公的な医薬品情報でも副作用として報告されています。もともとの症状に、かぶれによる赤みやかゆみが加わって、状態がより分かりにくくなることもあります。
先に薬を塗ると検査で菌が見つかりにくくなることがある
市販薬を先に使ってほしくない一番の理由はこれです。抗真菌薬を先に塗ってしまうと皮膚の中の菌の量が減り、KOH検査で菌が見つかりにくくなることが実際によくあります。せっかく受診しても、「本当に水虫かどうか」の確認そのものが難しくなってしまうのです。
誤解のないように言っておくと、市販の水虫薬が悪いわけではありません。正しく水虫と診断されたうえで使えば、効果が期待できる薬です。ただ、市販薬を塗る前に、まず本当に水虫か確認してほしいと思っています。
本当に足白癬なら、基本は塗り薬です
KOH検査で白癬菌が確認できれば、足白癬という診断になります。多くの場合、治療は外用抗真菌薬が基本です。
外用薬は1日1回で使うことが多いです。僕はルリコン(ルリコナゾール)をよく使っていますが、薬剤そのものに強いこだわりがあるわけではありません。同じように効果が期待できる外用抗真菌薬はほかにもあります。
薬の種類そのものよりも、僕が大事だと思っているのは塗り方です。
水虫薬は見えているところだけに塗らない
足白癬の治療でよくあるつまずきが、症状が出ている場所だけに点塗りしてしまうことです。
白癬菌は、目に見える症状がない場所にも広がっていることがあります。そのため、症状のある指の間だけでなく、症状のないところも含めて、患側の足全体に広く塗ることを大切にしています。点ではなく、面で塗るイメージです。
片足だけに症状がある場合は、基本的にはその足だけで大丈夫です。
一番大事なのは「治ったと思ってから+1か月」
この記事で僕が一番伝えたいのは、実はここです。
外用薬を使っていると、赤みや皮むけは比較的早く良くなります。ただ、見た目が良くなった時点では、角質の中にまだ白癬菌が残っていることがあります。皮膚真菌症診療ガイドラインでも、炎症が治まると菌が死滅していなくても症状だけが先に消えてしまうことがあり、これによる治療の自己中断が再発の大きな原因になると指摘されています。
僕は実際の診療では、見た目が治ったと思ってからさらに1か月は塗ってほしいとお伝えしています。見た目のきれいさと、菌がいなくなったことは、必ずしも同じタイミングではありません。
ガイドラインでも、検査で菌が確認できなくなったことを確かめたうえで、さらに1か月ほど塗布を続けることが治療のコツの一つとして挙げられています。実際の診療では毎回すぐに再検査ができるとは限らないため、僕は「見た目が治ったと思ってから+1か月」という分かりやすい目安をお伝えするようにしています。
「治った」と思ってから、もう1か月。ここまでやり切って、はじめて治療は終わりだと僕は考えています。
塗り薬だけで治療しないこともあります
足白癬の治療は、基本的には外用薬で十分なことがほとんどです。ただ、次のような場合には、内服の抗真菌薬を検討することがあります。
- 角質が厚くなっている場合
- 症状の範囲が広い場合
- 外用薬だけではなかなか治りにくい場合
- 外用抗真菌薬でかぶれてしまった場合
僕は足白癬で内服薬を使う場合、テルビナフィンを選ぶことが多いです。
内服の抗真菌薬は、外用薬に比べて全身への影響を考える必要があります。特に肝機能への影響が知られており、添付文書上も、投与前や投与中の肝機能検査などの確認が必要だとされています。用量や内服期間、細かな副作用については、実際に内服を検討する段階で、お一人お一人の状態に合わせて説明します。
爪まで白く・厚くなっていたら治療が変わります
足の水虫を繰り返している方の中には、爪が白く濁ったり、厚くなったりしている方もいらっしゃいます。これは爪白癬(爪の水虫)の可能性があり、足の皮膚だけの水虫(足白癬)とは治療の考え方が変わります。
爪白癬は外用薬だけでは治りにくいことが多く、内服治療を積極的に検討する場面が多い病気です。今回の記事では深く扱わず、今後別記事で解説します。
水虫を繰り返さないために
水虫を繰り返さないための生活面の工夫は、あまり細かくお伝えしないようにしています。
基本は、足を蒸れたままにせず、乾かすことです。靴や靴下を通気性の良いものにする、帰宅後は足をしっかり乾かす、といった工夫は助けになります。
ただ、生活習慣よりも大事なのは、治療を中途半端にやめないことだと僕は考えています。どれだけ生活に気をつけても、治療が不十分であれば再発しやすくなります。
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 まず、本当に水虫なのか確認する
水虫っぽく見えても、僕は見た目だけでは診断しません。KOH検査で白癬菌を確認してから治療を始めます。汗疱や湿疹など、水虫に見えて実際には別の病気ということもあります。市販の水虫薬を先に使ってしまうと、KOH検査で白癬菌が見つかりにくくなることもあるため、できれば使用前に確認したいと考えています。
2 水虫なら、見えているところだけに塗らない
水虫と診断したら、症状が出ている部分だけに薬を塗るのではなく、水虫が広がっている可能性のある範囲まで広めに塗ってもらいます。僕は基本的に1日1回の外用を中心に治療しています。
3 見た目が治っても、すぐに薬をやめない
皮むけや症状がなくなると「治った」と思って薬をやめたくなります。ただ僕は患者さんに、見た目がきれいになってからも、さらに1か月程度は外用を続けてもらうよう説明しています。治療途中でやめず、しっかり治し切ることが大切だと考えています。
まとめ
足の水虫について、実際の診療で僕が考えていることをまとめます。
- 見た目だけで「水虫」と決めつけない
- まずKOH検査で確認する
- 水虫だったら、外用抗真菌薬を面で広く塗る
- 治ったと思ってからも、さらに1か月は続ける
- 治りにくい、範囲が広いなどの場合は内服も選択肢になる
- 水虫は、きちんと診断してきちんと治療すれば、治せる病気です
