抗ヒスタミン薬をきちんと使っても、毎日のように蕁麻疹が出る。そんな慢性蕁麻疹では、生物学的製剤としてゾレア(オマリズマブ)とデュピクセント(デュピルマブ)が選択肢になります。
どちらも「注射の治療」ですが、作用する場所も、エビデンスの厚みも、実際の使い分けも同じではありません。
なお、ここで扱うのは主に、原因となる刺激が特定できず、6週間を超えて繰り返す特発性の慢性蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹/chronic spontaneous urticaria:CSU)です。
結論:基本はゾレア、条件によってデュピクセント
2026年の日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」では、抗ヒスタミン薬の併用や増量を行ってもコントロール不良の慢性特発性蕁麻疹に対して、オマリズマブは推奨の強さ1、エビデンスAとされています。
一方、デュピルマブは推奨の強さ2、エビデンスBで、「効果を期待し得る」と位置づけられています。
この違いは、実際の診療で僕が「まずゾレアを考える」理由と一致します。
ゾレアとデュピクセントの違い
| 比較 | ゾレア | デュピクセント |
|---|---|---|
| 一般名 | オマリズマブ | デュピルマブ |
| 主な標的 | IgE | IL-4/IL-13シグナル |
| 国内の慢性蕁麻疹での位置づけ | エビデンスが厚く、まず考えやすい | 有効性あり。条件によって選択 |
| 成人の承認用量 | 300mgを4週間ごと | 初回600mg、その後300mgを2週間ごと |
| 総IgE値 | 投与量はIgE値で決めない。ただし治療反応との関連を示すデータあり | ベースラインIgE値にかかわらず有効性を示したデータあり |
| アトピー性皮膚炎合併 | 蕁麻疹治療として有力 | アトピー側にも治療が必要ならメリットを考えやすい |
なぜ僕は基本的にゾレアを先に考えるのか
一番大きいのは、慢性蕁麻疹に対するエビデンスの蓄積です。
ゾレアは国内外で長く使用され、ランダム化比較試験やメタ解析でも、膨疹、かゆみ、QOLを改善することが確認されています。日本皮膚科学会ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬を十分に使ってもコントロール不良なら、強く推奨される治療です。
僕は、慢性蕁麻疹だから最初から注射に進むのではなく、まず第2世代H1抗ヒスタミン薬をきちんと使います。それでも症状が続き、睡眠・仕事・学校などに影響が残るなら、次の段階としてゾレアを検討します。
ゾレアそのものについては、「慢性蕁麻疹でゾレアを考えるのはどんなとき?」で詳しく解説しています。
アトピー性皮膚炎を合併しているなら、デュピクセントを考えやすい
デュピクセントは、IL-4とIL-13のシグナルを抑える生物学的製剤です。日本ではアトピー性皮膚炎と特発性の慢性蕁麻疹の両方に承認されています。
そのため、慢性蕁麻疹だけではなく、アトピー性皮膚炎もあり、そちらも全身治療を考える程度にコントロール不良であれば、デュピクセントを選ぶメリットが大きくなることがあります。
もちろん、アトピーがあるだけで全員にデュピクセントを使うわけではありません。アトピー側の重症度や外用治療の状況も含めて考えます。
アトピー性皮膚炎でのデュピクセントについては、「アトピーでデュピクセントを考えるのはどんなとき?」も参考にしてください。
総IgEが低いと、ゾレアは効きにくい?
ここは治療選択を考えるうえで重要なポイントです。
複数の研究やメタ解析では、治療前の総IgEが低い患者では、ゾレアへの反応が乏しい、または反応が遅い傾向が報告されています。2026年の日本皮膚科学会ガイドラインでも、血清総IgEが比較的高い患者でオマリズマブが有効であり、低IgEの患者では反応が乏しい症例があることが解説されています。
ただし、「IgEが低ければゾレアは効かない」という意味ではありません。研究ごとにカットオフ値は異なり、総IgEだけで効果を完全に予測することはできません。
一方、デュピクセントの第3相試験では、ベースラインの総IgEが高い患者でも低い患者でも、蕁麻疹の活動性やかゆみの改善が認められています。
そのため僕は、かなり低IgEでゾレアが効きにくそうな背景がある場合には、デュピクセントも早めに選択肢に入れることがあります。
ゾレアが効かなかったら、すぐデュピクセント?
必ずしも単純な「ゾレア→デュピクセント」という順番ではありません。
まず、本当に十分な期間ゾレアを使ったか、抗ヒスタミン薬をどう併用しているか、症状評価が適切かを確認します。ゾレアは早く効く人もいれば、反応まで時間がかかる人もいます。
一方で、ゾレアで十分な効果が得られない、あるいは使いにくい理由がある場合には、デュピクセントやシクロスポリンなど次の治療を検討します。
なお、デュピクセントの臨床試験では、オマリズマブ未治療群では有効性が確認された一方、オマリズマブ不耐容・不完全反応群では主要評価項目を満たさなかった試験もあります。つまり、ゾレア抵抗性なら必ずデュピクセントが効く、とは言えません。
副作用や注意点は?
どちらも生物学的製剤で、注射部位反応などがみられることがあります。また、頻度は高くありませんが、重い過敏反応やアナフィラキシーにも注意が必要です。
デュピクセントでは、眼症状なども知られており、アトピー性皮膚炎を合併している患者では特に既往や症状を確認します。
薬の「強さ」だけで選ぶのではなく、既往歴、合併症、治療歴、生活への影響、通院頻度なども含めて決めることが大切です。
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 慢性蕁麻疹では、基本はゾレアを先に考えます
抗ヒスタミン薬を適切に使ってもコントロールできない慢性蕁麻疹では、エビデンスの厚さとガイドライン上の位置づけから、僕はまずゾレアを考えることが多いです。
2 アトピー性皮膚炎を合併しているなら、デュピクセントを考えます
蕁麻疹だけでなく、アトピー性皮膚炎も治療が必要な状態なら、両方を見ながらデュピクセントを選ぶメリットがあります。
3 総IgEがかなり低いときは、ゾレアの反応性も意識します
低IgEではゾレアが効きにくいというデータが複数あり、僕も治療選択の参考にします。ただしIgEだけで決めるわけではなく、症状、治療歴、合併症を合わせて判断します。
4 「どちらが強い薬か」ではなく、その人にどちらが合うかで選びます
蕁麻疹の治療は、薬剤名を選ぶこと自体が目的ではありません。膨疹とかゆみを十分に抑え、睡眠や仕事など日常生活を取り戻せる治療を選ぶことが大切です。
まとめ
慢性蕁麻疹で抗ヒスタミン薬だけでは十分に抑えられない場合、ゾレアとデュピクセントはいずれも選択肢になります。
現時点では、エビデンスとガイドライン上の位置づけから基本はゾレア。一方で、アトピー性皮膚炎を合併している、総IgEが低いなどの背景があれば、デュピクセントを選ぶ理由が出てきます。
「どちらを使うか」は一つの検査値だけでは決めません。これまでの治療反応、症状の強さ、合併症を含めて総合的に判断します。
参考文献
- 日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)
- PMDA:ゾレア 医療用医薬品情報
- PMDA:デュピクセント 医療用医薬品情報
- Chuang KW, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2023.
- Maurer M, et al. Dermatol Ther (Heidelb). 2024.
医療情報確認日:2026年10月21日
