「ニキビにレーザーを当てた方が早く治る?」「IPLやLEDを受けた方が跡になりにくい?」「美容施術を何回も受けているのに、また新しいニキビができる」——こうした相談は少なくありません。
結論からいうと、活動性ニキビそのものに対して、僕はレーザー・光治療を最初の主役にはしません。まず優先するのは、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどの外用治療、必要に応じた抗菌薬などで新しい炎症を止めることです。
最初に知ってほしいこと
レーザーや光治療に「まったく効果がない」という意味ではありません。一定の有効性を示す研究はあります。ただし、機器や波長、治療条件が多様で、標準的な薬物治療と比べてエビデンスが十分にそろっているわけではありません。活動性ニキビと、ニキビ跡の赤み・凹みの治療は分けて考えることが大切です。
ニキビに使われる「レーザー・光治療」とは?
ニキビに使われる機器治療には、いくつか種類があります。ひとまとめに「レーザー」と呼ばれることもありますが、実際には仕組みが異なります。
- 青色光・赤色光などのLED・光線療法:炎症性ニキビへの作用を期待する
- IPL(光治療):広い波長の光を照射する機器
- 光線力学療法(PDT):光に反応する物質を組み合わせて毛包脂腺系へ作用させる
- 各種レーザー:波長や機器により、血管・皮脂腺・真皮など狙う組織が異なる
そのため、「レーザーを受ければニキビに効く」と一括りにはできません。何を治したいのかによって選ぶ機器も変わります。
日本のガイドラインではどう位置づけられている?
日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、炎症性ニキビに対する青色光療法について、一定の有効性を示す報告はあるものの、国内で十分な高い水準のエビデンスがないことなどから推奨度C2です。
また、ニキビあるいはニキビ跡に対するレーザー治療も、治療効果が期待できる場合に行ってよいとしながら、国内での検討が十分ではなく保険適用もないことからC2とされています。
つまり、日本のガイドライン上でも「絶対にやってはいけない治療」ではありません。ただ、標準治療より先に積極的に勧める位置づけではないということです。
海外でもレーザー・光治療が第一選択というわけではありません
米国皮膚科学会(AAD)の2024年ガイドラインでは、過酸化ベンゾイルや外用レチノイドなどの薬物治療には明確な推奨があります。
一方、ケミカルピーリング、レーザー・光治療、マイクロニードリングなどの処置については、推奨を作るにはエビデンスが不十分とされています。
レーザーや光治療だけでニキビが完全に治るわけではなく、結果には個人差があります。薬物治療と組み合わせて使われることもあります。
なぜ僕は、まず保険治療を優先するのか
理由は単純で、ニキビ治療で一番大切なのは新しいニキビをできるだけ早く止めることだと考えているからです。
赤く腫れるニキビやしこり状のニキビが繰り返されるほど、赤みや色素沈着だけでなく、凹んだニキビ跡につながるリスクがあります。
その状態で美容施術を何度も繰り返しても、活動性ニキビが止まっていなければ新しい跡は増え続けます。
僕はまず、国内で標準的に使える外用治療をきちんと行い、炎症が強ければ必要に応じて内服抗菌薬や処置を組み合わせます。重症例では自費治療を含めて早めに治療方針を見直すこともあります。
ニキビ全体の治療方針については、「ニキビは皮膚科でどう治す?」で詳しく解説しています。
「レーザーを受けているのに新しいニキビが出る」なら見直したい
実際の診療では、美容クリニックなどでレーザーや光治療を何度も受けているのに、毎週のように新しい炎症性ニキビができている患者さんを診ることがあります。
この場合、僕は施術回数を増やす前に、そもそも活動性ニキビの薬物治療が十分かを確認します。
アダパレンや過酸化ベンゾイルを適切な範囲・量・期間で使えているか。炎症が強いなら抗菌薬を組み合わせる必要がないか。成人女性ならホルモン治療を考える余地がないか。重症ならイソトレチノインを検討すべき状況ではないか。
こうした部分を整理せず、機器治療だけを追加していくことは、僕はあまりしません。
ケミカルピーリングとの違いは?
ケミカルピーリングも美容施術の一つですが、日本のガイドラインでは、標準治療が無効または実施できない場合に、グリコール酸やサリチル酸マクロゴールによるピーリングを選択肢の一つとしています。
つまり、レーザー・光治療と同様に「まず美容施術から」という位置づけではありません。
僕自身は活動性ニキビにピーリングを主役として使うことは基本的にありません。詳しくは「ニキビにケミカルピーリングは必要?」で解説しています。
ニキビ跡になった後は話が別です
ここは非常に重要です。
活動性ニキビへのレーザー・光治療と、ニキビが落ち着いた後の赤みや凹みへの治療は、同じ話ではありません。
たとえば、炎症が落ち着いた後も残る赤みに対しては、血管を標的とするVbeamなどを検討することがあります。
一方、凹んだニキビ跡では、rolling scar、boxcar scar、ice pick scarなど形によって治療が変わります。フラクショナルレーザーが選択肢になることもありますし、癒着が強いrolling scarではサブシジョンの方が治療の中心になることもあります。
ニキビ跡の種類と治療については、「ニキビ跡は全部同じではありません」で詳しく整理しています。
レーザー・光治療を考えてもよいのはどんなとき?
僕が検討するなら、次のような場面です。
- 標準的な薬物治療だけでは十分に改善しない
- 薬が使えない、または副作用などで継続が難しい
- 活動性ニキビが落ち着いた後の赤みを治したい
- ニキビ跡の凹みなど、構造的な問題を治療したい
- 期待できる効果と限界、費用、副作用を理解したうえで補助的に使う
重要なのは、「ニキビだからレーザー」ではなく、今残っている問題が何なのかを診断してから治療を選ぶことです。
副作用やデメリットは?
機器によって異なりますが、赤み、腫れ、ヒリヒリ感、痛み、熱感などが起こることがあります。
まれですが、水疱、やけど、炎症後色素沈着、色素脱失、瘢痕などが生じる可能性もあります。肌色や日焼けの状態によってリスクが変わる治療もあります。
また、多くは保険適用外で、複数回の治療が必要になることがあります。費用をかければ必ず標準治療より早く治る、というものではありません。
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 活動性ニキビにレーザー・光治療を主役としては使いません
赤ニキビが次々できているなら、まず新しい炎症を止めることを優先します。アダパレンや過酸化ベンゾイル、必要な内服治療など、再発を抑える治療を土台にします。
2 美容施術を繰り返しているのに悪化するなら、治療方針を見直します
「高い施術を受けているから十分治療している」とは限りません。新しいニキビが増えているなら、薬物治療が適切かをもう一度確認します。
3 赤みやクレーターになった後は、レーザーが役立つことがあります
活動性ニキビが落ち着いた後の赤みにはVbeamを使うことがありますし、凹みではフラクショナルレーザーを組み合わせることもあります。ただし、凹みの形によってはレーザーよりサブシジョンなどを優先します。
4 「何の機械を使うか」より「今何を治すべきか」を先に決めます
ニキビ本体、赤み、色素沈着、凹みでは必要な治療が違います。僕は機械ありきではなく、診断してから治療方法を選ぶことを大切にしています。
最後に:レーザーをするかより、治療の順番が大切です
レーザーや光治療には一定の可能性がありますし、僕自身もニキビ跡の赤みや凹みに対して機器治療を使うことがあります。
ただ、活動性ニキビが続いている段階では、僕はまず標準的な薬物治療を優先します。
一番避けたいのは、施術を繰り返している間にも新しいニキビができ続け、結果として跡が増えてしまうことです。
まず新しいニキビを止める。その後に、残った赤みや凹みを治す。この順番を大切にしています。
