札幌の冬に乾燥肌・湿疹が悪化しやすい理由と対策

札幌の冬に乾燥肌・湿疹が悪化しやすい理由と、暖房・乾燥・摩擦への対策を解説する記事のアイキャッチ画像

札幌の冬になると、すねや腕が粉をふいたようにカサカサする、背中や腰まわりがかゆい、手がひび割れる、もともとの湿疹やアトピー性皮膚炎が悪化する——こうした相談は珍しくありません。

ただし、札幌の冬の肌トラブルを単純に「外の空気が乾燥しているから」とだけ考えるのは少し違います。気象庁の平年値を見ると、札幌の冬の屋外相対湿度は極端に低いわけではありません。一方で、気温が低い空気はもともと含める水蒸気量が少なく、その空気を室内で暖房すると相対湿度は下がります。そこに長時間の暖房、熱いお風呂、洗いすぎ、衣類の摩擦などが重なることで、皮膚のバリア機能が崩れやすくなります。

この記事では、札幌の冬に乾燥肌や湿疹が悪化しやすい理由と、僕が実際の診療で大事にしたい対策を整理します。

冬に指先や耳が赤く腫れてかゆい場合は、乾燥だけでなく、しもやけ(凍瘡)のこともあります。

目次

札幌の冬は、なぜ肌が乾燥しやすいのか

1.寒い空気を暖房すると、室内は乾燥しやすい

冬の札幌は気温が低いため、外気に含まれる水蒸気の絶対量が少なくなります。そこへ室内で暖房をかけると、空気の温度だけが上がり、湿度は下がりやすくなります。日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」でも、冬期の暖房によって室内の相対湿度が低下するため、必要に応じて加湿器などによる対策が必要とされています。

低湿度の環境では角質層の水分が減り、皮膚表面が荒れやすくなることが報告されています。冬は皮膚の水分量や皮脂が低下しやすいという研究もあり、「冬になると急に肌が弱くなった気がする」という感覚には、きちんと理由があります。

2.暖房の近くで過ごす時間が長い

札幌の冬は暖房が生活の前提になります。ストーブやヒーターの温風が直接当たる場所、暖房の効いた職場や車内などに長時間いると、皮膚表面の乾燥が進みやすくなります。加湿器を置くだけで完全に防げるわけではなく、暖房の風を直接肌に当てないことも大切です。

3.熱いお風呂と長風呂

寒い日は熱いお風呂に長く入りたくなりますが、熱すぎるお湯や長時間の入浴は、皮膚表面の脂質を落としすぎて乾燥を悪化させることがあります。入浴後に急にかゆくなる人は、温度や入浴時間も見直してみてください。

4.洗いすぎ・こすりすぎ

乾燥している皮膚に、毎日ナイロンタオルで強くこする、洗浄料をたっぷり使う、といった習慣が重なると、角質層のバリアがさらに傷つきます。皮脂欠乏症の手引きでも、過度な洗浄やナイロンタオル・ブラシによる摩擦は乾燥を助長するとされています。

5.ウールなど衣類の刺激

冬は厚手の服やウール素材を着る機会が増えます。乾燥して敏感になった皮膚では、普段なら気にならない程度の摩擦でもかゆみにつながることがあります。チクチクする素材が直接肌に触れないよう、内側にやわらかい素材を一枚はさむだけでも違います。

「乾燥肌」と「湿疹」は同じではありません

ここはとても大事です。皮膚が白く粉をふく、細かくカサカサする程度で、赤みや強いかゆみがほとんどない段階なら、保湿を中心に改善することがあります。

一方で、赤い、強くかゆい、掻き傷がある、ひび割れる、ジュクジュクする、といった変化が出ている場合は、単なる乾燥ではなく炎症を伴う湿疹になっている可能性があります。皮脂欠乏症が進むと、皮脂欠乏性湿疹に移行することもあります。

重要ポイント

赤みや強いかゆみが出ている湿疹を、保湿剤だけで何週間も我慢し続ける必要はありません。炎症があるなら、炎症を抑える治療を組み合わせた方が早く楽になることがあります。

札幌の冬にやってほしい乾燥対策

保湿は「乾燥してから」ではなく、毎日の習慣にする

乾燥しやすい時期は、症状が強くなってから慌てて塗るより、毎日の保湿を続ける方が大切です。日本皮膚科学会・日本アレルギー学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」では、保湿外用薬は角質層の水分量を改善し、皮膚バリア機能の維持や再燃予防に有効とされています。

外用回数は1日1回より2回の方が保湿効果が高く、そのうち1回は入浴後が望ましいとされています。現実には毎日2回が難しい方もいるので、まずは「入浴後に1回は全身へ」を習慣にするところからでも構いません。

保湿剤は、乾燥の程度と使いやすさで選ぶ

白色ワセリン、ヘパリン類似物質、尿素製剤など、保湿・保護に使われる外用剤にはそれぞれ特徴があります。ベタつきが苦手ならローションやクリーム、乾燥が強い部位なら軟膏系など、続けやすさも重要です。

ただし、ひび割れや炎症が強い皮膚では尿素製剤がしみることがあります。「何を塗っても痛い」「塗るとかえって赤くなる」という場合は、保湿剤による刺激や接触皮膚炎も含めて見直した方がよいことがあります。

入浴では、熱すぎるお湯・長風呂・ゴシゴシ洗いを避ける

体を洗うときは、洗浄料をよく泡立て、手でやさしく洗う程度で十分です。特に乾燥が強いすねや腕まで毎日しっかり洗浄料で洗う必要がない人もいます。入浴後は水分が蒸散しやすいため、タオルでやさしく水分を押さえたあと、早めに保湿してください。

室内は「暖かさ」だけでなく湿度も見る

暖房を使う時期は、温度計だけでなく湿度計もあると便利です。家庭環境では結露やカビとのバランスもあるため一律には決められませんが、極端な低湿度が続かないよう加湿器などを使って調整してください。加湿器は定期的に清掃し、暖房の風が直接肌に当たる配置も避けましょう。

衣類は「暖かさ」だけでなく刺激の少なさも意識する

ウールなどチクチクする素材が悪いというより、乾燥した皮膚に直接触れて刺激になることが問題です。肌側にはやわらかい下着を一枚入れ、汗をかいたらそのまま放置しないようにします。

保湿だけで治らないときは、湿疹の治療が必要です

赤みや強いかゆみがある場合、保湿は大切ですが、それだけでは炎症を十分に抑えられないことがあります。状態に応じてステロイド外用薬などの抗炎症治療を使い、まず湿疹を落ち着かせたうえで、保湿を続けて再燃を防ぐ、という考え方が基本です。

特に、もともとアトピー性皮膚炎がある方は冬の乾燥をきっかけに再燃しやすいことがあります。アトピー性皮膚炎そのものの治療については、「アトピー性皮膚炎とは?症状・原因・治療を皮膚科医が解説」で詳しく説明しています。

子どもの湿疹については、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎との見分けも含めて、「子どもの湿疹|乳児湿疹・アトピーをどう見分ける?」も参考にしてください。

こんなときは皮膚科を受診してください

  • 保湿を続けても、赤みやかゆみが改善しない
  • 夜眠れないほどかゆい
  • ひび割れて痛い、出血する
  • ジュクジュクする、黄色いかさぶたが出る
  • 湿疹が急に広がっている
  • 毎年冬になると同じ場所が悪化する
  • 子どもが掻き壊している

「乾燥する季節だから仕方ない」と我慢しているうちに、掻くことでさらに皮膚が傷つき、かゆみが強くなる悪循環に入ることがあります。保湿だけで改善しないなら、一度皮膚の炎症がどの程度あるか確認してもらう方が早いです。

IN PRACTICE

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 冬の湿疹を「保湿不足」だけで片づけない

乾燥は大きなきっかけですが、すでに赤くかゆい状態まで進んでいれば、保湿剤を増やすだけでは追いつかないことがあります。診察では、単なる乾燥なのか、皮脂欠乏性湿疹なのか、アトピー性皮膚炎なのか、接触皮膚炎など別の原因がないかをまず見ます。

2 炎症があるなら、早めに炎症を止める

かゆいから掻く、掻くからさらにバリアが壊れる、という悪循環を長く続けないことが大切です。必要ならステロイド外用薬などを使って炎症をきちんと抑え、その後に保湿を続けて再燃しにくい状態を作ります。

3 札幌の冬では「続けられる対策」にする

暖房を使わない、毎日完璧に何度も保湿する、という非現実的な指導では続きません。入浴後の保湿、暖房の風を直接当てない、湿度を確認する、刺激の少ない衣類を選ぶ。まずは生活の中で続けられる対策を組み合わせる方が大事だと考えています。

最後に:札幌の冬は、乾燥する前から対策を

札幌の冬は、低い気温と長時間の暖房によって、皮膚が乾燥しやすい環境が続きます。乾燥そのものは珍しいことではありませんが、赤みや強いかゆみまで出ているなら「冬だから仕方ない」で済ませないでください。

保湿、入浴、室内環境、衣類を少し調整するだけでも予防できることはあります。それでも悪化する場合は、湿疹として炎症を治療した方がよいことがあります。冬の間ずっと我慢するのではなく、早めに状態を確認することが、春まで快適に過ごす近道です。

参考文献

  1. 気象庁「札幌(石狩地方)平年値 1991〜2020年」
  2. 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」
  3. 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
  4. Wei KS, et al. Effects of season on stratum corneum barrier function and skin biomarkers. J Cosmet Sci. 2016;67(3):185-203.
  5. Izutsu-Matsumoto Y, et al. Effect of low humidity on the barrier functions of keratinocytes in a reconstructed human epidermal model. Int J Cosmet Sci. 2025;47(3):523-534.
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AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
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