「ひじやひざの赤い部分に、白い皮が厚く付く」「頭のフケのようなものがなかなか治らない」。こうした症状が続くとき、乾癬(かんせん)という病気が隠れていることがあります。
乾癬は、炎症によって皮膚が赤く厚くなり、よくなったり悪くなったりを繰り返す病気です。名前の響きは似ていますが「感染」する病気ではなく、人にうつりません。不潔だから起こるものでもありません。[1][2]
乾癬でよくみられる症状
最も多い尋常性乾癬では、周りとの境目が比較的はっきりした赤い盛り上がりに、白っぽい皮むけが重なります。ひじ、ひざ、頭、腰・お尻などに出やすく、かゆみを伴う人も、あまりかゆくない人もいます。
爪の表面に小さなへこみができる、爪が浮く・厚くなるといった変化を伴うこともあります。爪水虫などと似るため、見た目だけで自己判断しないことが大切です。[1]
なぜ起こる?生活だけが原因ではない
体質に、免疫の働きやさまざまな環境要因が重なって起こると考えられています。肥満、感染症、ストレス、一部の薬などが悪化に関係することがありますが、一つの原因だけで説明できる病気ではありません。
「生活を正せば治る」「自分の管理が悪いせい」と考える必要はありません。生活上の調整と、炎症そのものへの治療を並行して考えます。[10]
湿疹や水虫との違いは、診察で確かめる
頭皮の脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの湿疹、白癬(水虫)などと見分ける必要があります。診察では、発疹の形、出ている場所、爪、これまでの経過を確認します。手のひら・足の裏の症状については、掌蹠膿疱症の症状と治療もご覧ください。
乾癬を一回の採血で確定できる検査はありません。診断が難しい場合は皮膚の一部を採取する病理検査を行い、白癬が疑わしければ菌を調べます。また、血圧・血糖・脂質などの確認や、使う治療に応じた検査を行います。治療中の採血は、副作用を早く見つけるためにも必要です。[7]
治療は、皮膚の広さと生活への影響で選ぶ
塗り薬:炎症と厚みを抑える
ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、その配合薬などを使います。頭皮・顔・体で使い方や剤形が変わり、塗る面積や量も重要です。保湿剤は乾燥を和らげますが、炎症を抑える薬の代わりにはなりません。
改善が不十分なときは、薬が弱いと決める前に、塗りにくさや量、頻度も確認します。ステロイドの長期・不適切な使用による皮膚の薄さなど、外用薬にも注意点があります。[3]
光線療法:医療機関で紫外線を調整して当てる
ナローバンドUVBなどの光線療法では、治療に使う波長と照射量を調整します。通院の頻度や、当てたい部位を踏まえて選択します。発赤ややけどに注意しながら行う治療で、日焼けサロンや強い日光浴で代用するものではありません。[9]
飲み薬:広がりや難治性に応じた全身治療
外用だけでは十分に抑えられない場合などには、免疫や炎症に働きかける飲み薬も選択肢です。従来の内服薬に加え、TYK2阻害薬のデュークラバシチニブなどが国内で承認されています。
デュークラバシチニブは成人を対象とする薬で、既存治療で効果不十分などの条件があります。重い感染症や活動性結核がある場合は使用できません。飲み薬は種類ごとに腎臓・肝臓・血圧・感染症などの注意点が異なり、検査をしながら選びます。[3][5]
注射・生物学的製剤:炎症の特定の働きを抑える
生物学的製剤は、乾癬の炎症に関わる物質を標的にする薬です。既存治療で十分に改善しない場合などに検討し、関節症状も踏まえて薬を選びます。皮膚の面積だけでなく、手足や陰部などの症状による生活の支障も重要です。
感染症などのリスクがあるため、開始前に結核や肝炎ウイルスなどを確認し、治療中も体調をみます。適応疾患、年齢、投与間隔は製剤ごとに異なります。国内の使用条件と診療体制を確認し、必要に応じて専門施設と連携します。[4]
妊娠を希望する場合、妊娠・授乳中の場合は、治療前に伝えてください。使えない薬や避妊期間の指定がある薬もあり、乾癬の薬を一括りに安全・危険とは判断できません。費用も治療によって違うため、保険適用の条件と自己負担の見通しを確認します。
CLINICAL STORY
実際の診療で印象に残っていること
実際に、これまで外用治療しか知らず、全身に強い乾癬の症状がある状態で受診された方がいました。
それまで長く塗り薬だけで治療を続けていましたが、症状の程度をみて、生物学的製剤という選択肢があることを説明しました。適応や安全性を確認したうえで治療を始めたところ、皮疹は大きく改善しました。
その方は、乾癬がひどくなってから、大好きだった温泉旅行も諦めていたそうです。それが治療後には、「また温泉に行けるようになった」と話してくれました。
乾癬の治療は、皮疹を減らすことだけが目的ではありません。病気のせいで諦めていた生活を取り戻せることも、治療の大切な意味の一つだと感じた症例です。
よくなったあとも、無理なく続く管理を
効果を判断するまでの期間は治療によって異なり、数日で結論を出せないものもあります。目標と次の評価時期を決め、赤み・厚み・かゆみ・生活への影響を確認します。
皮を無理にはがしたり、強くこすったりせず、乾燥には保湿を行います。バランスのよい食事や体重管理も役立ちますが、特定の食品やサプリだけで治すことは目指しません。治療を続けても困りごとが残る場合は、相談して調整することが大切です。[8]
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
僕が重視したいのは、乾癬をその場の赤みだけでなく、長く付き合う病気として整理することです。一度皮膚が落ち着いても、その先に続けられる治療でなければ、生活の中で困りごとが残ってしまいます。
診察では、見える発疹の広さに加えて、頭皮の皮むけで服を選べない、手が痛んで仕事に支障がある、といったことも大切な情報です。症状が出ている面積が小さいから、負担まで小さいとは限りません。
塗り薬で十分に改善しないときは、使い方を確認したうえで、全身治療を含む別の選択肢も考える必要があります。慢性だから仕方がないと、つらさを固定してしまわないことが大切です。
関節の痛みやこわばりがあれば、皮膚とは無関係と考えずに伝えてほしいと思います。必要な診療科・専門施設へつなぐことも、乾癬の診療の一部です。
治療を強める場合も、効果だけでなく安全性、検査、通院、費用まで見通しを共有することが重要です。落ち着いた状態をどう維持するかを含めて、長く続けられる管理を考えたいと思います。
「繰り返すから仕方ない」で終わらせない
乾癬は人にうつらず、治療の選択肢がある病気です。診断がついていない赤みや皮むけが長く続く場合も、治療中でも生活の支障が残る場合も、皮膚科で相談してください。
この記事を書いた医師
皮膚科専門医・のぶあき。肌で悩む人が、遠回りしないために。医学的な情報と、診療で大切にしたい考え方を発信しています。プロフィール/札幌で皮膚科をつくるまで。
参考文献・情報源
1. 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A:乾癬はどういう病気ですか?
3. 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A:どんな治療法がありますか?
4. 日本皮膚科学会:乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)
5. PMDA:ソーティクツ錠6mg 電子添文(2026年5月改訂)
6. 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A:関節症性乾癬とは何ですか?
医学情報の確認日:2026年9月9日。薬の適応・使用条件は改訂されるため、処方時には最新の電子添文を確認します。
