「爪水虫と言われて、何年も塗り薬を塗っている。でも、ほとんど変わらない」
診療をしていると、こういう方に出会います。
もちろん、爪水虫に塗り薬が効かないわけではありません。内服ができない方や、内服を希望しない方にとって、外用薬は大切な治療の選択肢です。
ただ、爪がかなり厚くなっているのに、効果がほとんど感じられない塗り薬を何年も何となく続けている。そんな状態であれば、僕は一度治療方針を見直してもいいと思っています。特に爪が厚くなった爪白癬では、僕は内服治療を積極的に勧めています。
そして患者さんにはもう1つ、必ず理解しておいてほしいことがあります。治療を始めても、今ある白く濁った爪が、その場で透明な爪に戻るわけではありません。白癬菌を治療し、そのあと根元から新しいきれいな爪が伸びてくるのを待つ。爪水虫の治療では、この考え方がとても大切です。
まず、その爪は本当に「爪水虫」なのか
爪が白い。厚い。ボロボロする。こうした見た目だけで、「爪水虫だろう」と思われることがあります。
しかし、爪が厚い=爪白癬とは限りません。実際には、乾癬による爪変形、加齢に伴う爪の肥厚、そのほかの爪疾患などもあります。白い・黄色い・厚い爪の鑑別は、「爪が白い・黄色い・厚い|爪水虫以外の原因と見分け方」で詳しく整理しています。
そのため僕は、爪白癬を疑った場合には基本的にKOH直接鏡検を行い、白癬菌がいることを確認してから治療します。爪の一部を採取し、顕微鏡で確認する検査です。
見た目だけで決めつけて、違う病気に何か月も、何年も抗真菌薬を使うことは避けたいと考えています。爪水虫でも、まず診断をきちんとつけることが治療のスタートです。
爪が黒い、黒い縦線がある場合は、水虫以外に内出血や色素性病変、まれに爪部メラノーマも鑑別になります。「爪が黒い|内出血・ほくろ・メラノーマの見分け方」も参考にしてください。
爪水虫は塗り薬と飲み薬、どちらで治す?
塗り薬だけで治療することもあります
爪白癬には、クレナフィン(エフィナコナゾール)などの外用薬があります。僕も外用治療を使うことはあります。
特に、肝機能などの問題で内服しにくい方、内服を希望しない方にとって、外用薬は重要な選択肢です。僕自身は、外用薬を使う場合はクレナフィンを使用することが多いです。
クレナフィンは、1日1回、罹患している爪全体に塗布する外用抗真菌薬です。ただし添付文書にも記載されている通り、新しい爪が伸びてこない限り、いま変色している爪の見た目そのものが回復するわけではなく、治療には長期間を要します。
爪がかなり厚くなっている場合には、外用薬だけでは効果が限られることがあります。僕が外用か内服かを考える際に、特に重要視しているのが「爪の厚さ」です。
爪が厚いほど、僕は内服治療を積極的に勧めます
爪がそれほど厚くなく、病変も強くなければ、外用薬だけで治療する選択もあります。
一方、爪がかなり厚くなっている場合や、長年外用薬を使っているのに変化が乏しい場合には、僕は内服治療をかなり積極的に提案します。
爪が厚い場合、必要に応じて爪を削って薄くする処置をすることもあります。ただし、爪を削ること自体が爪白癬の治療の中心ではありません。白癬菌そのものをきちんと治療することが大切です。
僕がよく使うのはネイリンとテルビナフィン
僕が爪白癬の内服治療で主に使うのは、ネイリン(ホスラブコナゾール)とテルビナフィンです。
イトラコナゾールは、僕自身の普段の診療では基本的に使用していません。これは一般的な治療の選択肢として使われていないという意味ではなく、あくまで僕自身の診療での選択です。
ネイリン
僕がネイリンを使うことが多い一番大きな理由は、「飲む期間が最初から決まっている」ことです。
添付文書上、ネイリンは通常成人にホスラブコナゾールとして100mgを1日1回、12週間経口投与する薬です。
僕の場合は、12週間を飲み切ったら内服はいったん終了し、その後は薬を続けるのではなく、新しい爪が伸びてくるのを見てもらいます。「12週間飲めば、そこで内服は終われる」というわかりやすさが、僕がネイリンを選ぶ大きな理由の1つです。
テルビナフィン
治療費を抑えたい場合などには、テルビナフィンを選ぶことがあります。ジェネリック医薬品もあるため、費用面で選択肢になりやすい薬です。
テルビナフィンは、通常成人に125mgを1日1回、食後に内服する薬です。添付文書に爪白癬治療での具体的な投与期間は明記されていませんが、爪の中の薬剤濃度が有効域に達するまでの期間などから、臨床では6か月程度の内服が行われることが多いとされています。
僕自身の診療では、爪の伸び方や見た目の改善も確認しながら、比較的長めに治療することがあります。「見た目が治り切るところまで続けることが多い」というのが僕の感覚ですが、これは全員に当てはまる基準ではなく、添付文書やガイドラインで定められた投与期間ではありません。あくまで、爪の改善を確認しながら僕が治療期間を判断しているとご理解ください。
内服治療は採血をしながら行います
抗真菌薬の内服では、肝機能障害などの副作用に注意が必要です。テルビナフィンでは頻度は高くないものの、重篤な肝障害や血液障害が報告されており、添付文書上も投与前の検査と、投与中の定期的な肝機能検査・血液検査が求められています。
僕の場合は、ネイリンでもテルビナフィンでも、基本的に治療開始前に採血します。そして内服中は、基本的に毎月再診し、毎月採血をしています。肝機能や血液の状態を確認しながら、安全に治療を続けられるかを見ています。
これは「全員が毎月血液検査を受けるべき」というガイドライン上のルールというより、僕自身が安全に治療を続けるために行っている診療上の工夫です。添付文書に定められている検査については、実際に内服を検討する段階で、あらためて説明します。
爪がきれいになるまでには時間がかかります
「薬を飲めば、今ある爪が元に戻る」わけではありません
ここは今回の記事で特に伝えたい部分です。
患者さんの中には、「薬が効けば、今ある白い爪が透明な爪に戻る」と思っている方がいます。
しかし、基本的にはそうではありません。薬によって白癬菌を治療し、根元から新しいきれいな爪が伸びてくる。その新しい爪に押されるように、古い濁った爪が少しずつ先端へ移動していきます。
治療後すぐに見た目が正常にならなくても、それだけで「薬が効いていない」とは限りません。
薬を飲む期間と、爪がきれいになるまでの期間は別です
内服や外用で白癬菌そのものを治療する期間と、根元から生えた新しい爪が伸びて古い爪と入れ替わるまでの期間は、同じではありません。白癬菌の治療が終わっても、見た目の変化はゆっくりと進みます。
僕は「見た目がきれいになるまで最低1年くらい」と説明しています
足の爪は伸びるのが非常に遅い部位です。
僕は患者さんに、「見た目がきれいになるまで、最低でも1年くらいはかかると思ってください」と説明しています。これは、医学的にすべての患者さんが最低1年以上かかると断定しているわけではなく、僕が実際の診療で患者さんにしている説明です。爪の伸びる速さには個人差があり、高齢の方などでは、さらに時間がかかることもあります。
ネイリンを12週間飲んでも、その12週間で爪がすべてきれいになるわけではありません。「内服期間」と「見た目が正常になるまでの時間」は別のものだと考えてください。
足の水虫があれば、一緒に治療します
爪白癬の患者さんでは、足白癬(足の水虫)を同時に認めることもあります。その場合、僕はもちろん足の水虫も同時に治療します。
足の皮むけや水疱などの症状もある方は、水虫は皮膚科でどう治す?|まず”本当に水虫か”を確認する理由もあわせてご覧ください。
IN PRACTICE
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 まず、本当に爪水虫なのか確認する
爪が白い、厚いというだけで、僕は爪水虫とは診断しません。乾癬や年齢による爪の肥厚などもあるため、基本的にKOH検査で白癬菌を確認してから治療します。
2 爪が厚いなら、僕は内服を積極的に考える
外用薬だけで治療することもありますが、僕が特に重視しているのは爪の厚さです。かなり厚くなっている爪に、改善の乏しい塗り薬を何年も何となく続けるより、僕は内服治療を積極的に提案します。
3 治療後は「新しい爪が伸びるのを待つ」
薬を使えば、今ある濁った爪がそのまま透明になるわけではありません。白癬菌を治療し、根元から新しいきれいな爪が伸びてくるのを待ちます。僕は患者さんに、見た目がきれいになるまで最低1年くらいはかかることを説明しています。
塗り薬を何年も続けているのに治らないなら、一度見直してほしい
爪白癬では、外用薬にも内服薬にも役割があります。「爪水虫なら全員飲み薬」という話ではありません。
ただ、爪がかなり厚い、何年も外用薬を使っている、それでもほとんど改善していない。そういう状態なら、同じ治療を何となく続けるのではなく、一度きちんと検査をして治療方針を見直してほしいと思っています。
まず、本当に爪水虫なのか確認する。爪水虫なら、爪の厚さや状態を見て、外用でいくのか、内服を考えるのかを決める。そして治療後は、すぐに結果を求めるのではなく、新しい爪が伸びてくるのを待つ。
爪水虫は治療に時間のかかる病気ですが、治療方法はあります。何年も「とりあえず塗っている」状態になっている方こそ、一度皮膚科で相談してみてください。
