高齢の方で、「急に強いかゆみが出てきた」「赤い皮膚の上に、破れにくい水ぶくれが増えてきた」というときに考えたい病気の一つが水疱性類天疱瘡です。
類天疱瘡は、皮膚の表皮と真皮の境目にある構造に対して自己抗体ができることで起こる自己免疫性水疱症です。特に高齢者に多く、最初は水疱が目立たず、強いかゆみや湿疹のような赤みだけで始まることもあります。
類天疱瘡とは?
類天疱瘡は、皮膚の基底膜部にあるBP180やBP230などの蛋白に対して自己抗体が作られ、表皮と真皮の間がはがれて水疱ができる病気です。
最も多いのが水疱性類天疱瘡で、60歳以上の高齢者に多くみられます。
天疱瘡という名前の似た病気もありますが、天疱瘡は表皮の中で水疱ができるのに対し、類天疱瘡は表皮の下で水疱ができるため、比較的張りのある破れにくい水疱になりやすいのが特徴です。
どんな症状が出る?
強いかゆみ
類天疱瘡では、かなり強いかゆみが出ることがあります。水疱が出るより前に、数週間〜数か月にわたって、かゆい赤みや湿疹のような皮疹だけが続くこともあります。
赤く盛り上がった皮疹
蕁麻疹のような浮腫性紅斑や、湿疹のような赤い皮疹が出ることがあります。その上や周囲に水疱が出てくると、類天疱瘡らしさが増します。
パンパンに張った水疱
類天疱瘡では、皮膚の深いところで水疱ができるため、比較的張りのある緊満性水疱になります。
一方、天疱瘡では水疱の膜が薄く、破れやすく、びらんになりやすい傾向があります。
口の中に症状が出ることもあります
水疱性類天疱瘡では皮膚症状が中心ですが、一部では口腔内などの粘膜にびらんを生じることがあります。
水疱がない類天疱瘡もある?
あります。
類天疱瘡では、水疱が出る前に、強いかゆみ、湿疹様皮疹、蕁麻疹様の赤みだけが続くことがあります。高齢者の「治りにくいかゆい湿疹」で、通常の治療に反応しにくい場合には、水疱がなくても類天疱瘡を考えることがあります。
皮脂欠乏性湿疹、薬疹、疥癬、蕁麻疹など、ほかにも頻度の高い病気があります。見た目と経過だけでなく、必要に応じて血液検査や皮膚生検で確認します。
類天疱瘡はどうやって診断する?
皮膚生検
水疱や赤みのある皮膚を一部採取し、顕微鏡で確認します。類天疱瘡では、表皮の下に水疱ができ、好酸球を伴う炎症を認めることが多くあります。
蛍光抗体直接法
病変の近くの皮膚を採取し、基底膜部にIgGやC3が線状に沈着しているかを確認します。類天疱瘡の診断で重要な検査です。
血液検査|BP180抗体
血液では、BP180抗体などの自己抗体を調べます。診断の補助だけでなく、病勢の参考として経過を追うこともあります。
糖尿病の薬が関係することがある?
2型糖尿病に使われるDPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡の関連が知られています。
DPP-4阻害薬を使っている人すべてに類天疱瘡が起こるわけではありませんし、薬を中止すれば必ず治るわけでもありません。
ただし、DPP-4阻害薬を内服している患者さんに新たに類天疱瘡が疑われた場合は、糖尿病の主治医とも相談しながら、薬剤の変更・中止が可能か検討することがあります。
類天疱瘡はどう治療する?
治療は、皮疹の範囲、水疱の数、年齢、基礎疾患、感染症リスクなどを見ながら強さを決めます。
軽症|強いステロイド外用
皮疹が限局している軽症では、ストロング〜ベリーストロングクラスのステロイド外用を中心に治療することがあります。
テトラサイクリン系抗菌薬やダプソンなどを組み合わせることもあります。
中等症以上|ステロイド内服
全身に水疱が多発する中等症以上では、プレドニゾロンなどのステロイド内服が治療の中心になります。
類天疱瘡は高齢者に多いため、糖尿病、感染症、骨粗鬆症、筋力低下、精神症状など、ステロイドによる副作用にも十分注意が必要です。
治りにくい場合
ステロイドだけで十分に抑えられない場合や、副作用のためステロイドを増やしにくい場合には、免疫抑制薬、IVIG(免疫グロブリン大量静注療法)、血漿交換などを検討することがあります。
2026年からデュピルマブも選択肢になりました
2026年3月、日本ではデュピルマブ(デュピクセント)が「既存治療で効果不十分な中等症から重症の水疱性類天疱瘡」に適応追加されました。
成人では、初回600mgを皮下注射し、その後300mgを2週間隔で投与する用法です。
水疱性類天疱瘡に対する国内初の生物学的製剤で、特に高齢者でステロイドの副作用が問題になりやすい病気において、治療の選択肢が広がったことは大きな変化です。
水疱は自分で潰していい?
大きな水疱は日常生活で自然に破れることがありますが、自宅でむやみに破ることは勧めません。
水疱の表面は傷を守る役割もあります。破れた部分はびらんになり、細菌感染の入口になることがあります。
医療機関では、必要に応じて内容液を抜きつつ水疱の屋根を残すなど、傷を保護しながら処置します。
こんなときは早めに皮膚科へ
- 高齢者で強いかゆみが急に出てきた
- 蕁麻疹のような赤みの上に水疱が出てきた
- パンパンに張った水疱が次々に増える
- 水疱が広範囲に広がっている
- 口の中にもびらんがある
- 糖尿病でDPP-4阻害薬を内服している
- 水疱が破れて痛い、膿む、発熱する
実際の診療なら、僕はこう考えます
1 高齢者の強いかゆみでは、水疱がなくても類天疱瘡を頭に置きます
典型的な緊満性水疱が出ていれば疑いやすいですが、実際には「ずっとかゆい」「湿疹治療で治らない」という段階の患者さんもいます。高齢者で経過が合わないときは、水疱がないから除外とは考えません。
2 水疱を見たら、薬歴をかなり確認します
糖尿病薬、とくにDPP-4阻害薬の使用がないかは確認します。ただし、薬が原因だと決めつけず、臨床所見・病理・抗体検査を合わせて判断します。
3 高齢者だからこそ、ステロイドの副作用まで含めて治療を決めます
類天疱瘡は病気そのものを抑えることが必要ですが、高齢者ではステロイドによる感染症、糖尿病悪化、骨粗鬆症、筋力低下も大きな問題です。皮疹だけでなく全身状態を見ながら、必要最小限の治療強度を考えます。
4 2026年以降は、治療抵抗例でデュピルマブも意識します
デュピルマブが国内承認されたことで、中等症〜重症で既存治療が不十分な患者さんでは新しい選択肢が増えました。特にステロイドを増やし続けることのリスクが高い高齢者では、治療選択の幅が広がったと考えています。
まとめ
類天疱瘡は、高齢者に多い自己免疫性水疱症で、強いかゆみ、赤い盛り上がり、張りのある水疱が特徴です。
水疱が出る前に、かゆい湿疹のような皮疹だけが続くこともあります。診断には皮膚生検、蛍光抗体直接法、BP180抗体などを用います。
治療はステロイド外用・内服を中心に、重症度や全身状態に応じて調整します。2026年にはデュピルマブも国内で中等症〜重症の水疱性類天疱瘡に適応追加され、治療の選択肢が広がっています。
参考文献・情報源
医学情報の確認日:2026年10月27日。
