帯状疱疹後神経痛を減らすために知っておきたいこと|急性期の治療と痛み対策

帯状疱疹後神経痛を減らすために知っておきたいこと|急性期の治療と痛み対策

帯状疱疹の発疹が治ったあとも、ピリピリ、ズキズキ、焼けるような痛みが長く残ることがあります。これが帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)です。

PHNは帯状疱疹の代表的な合併症で、とくに高齢者や急性期の痛みが強い人では起こりやすくなります。

帯状疱疹後神経痛を完全に防ぐ方法はありません。ただし、発症早期に抗ウイルス薬を開始し、急性期の強い痛みを我慢させず、痛みの性質に合わせて鎮痛薬を使うことは非常に重要です。

この記事では、PHNを減らすために帯状疱疹の急性期から何を考えるか、ロキソニン・タリージェ・リリカ・トラマドールなどの使い分け、ペインクリニックへ相談するタイミング、ワクチンによる予防まで解説します。

目次

帯状疱疹後神経痛とは?

帯状疱疹では、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が神経節から再活性化し、皮膚だけでなく神経にも炎症を起こします。

発疹が治ったあとも神経の損傷や異常興奮が残ると、

  • ピリピリ・ジンジンする
  • 焼けるように痛い
  • 電気が走るように痛む
  • 服が触れるだけで痛い
  • 軽く触れただけで強く痛む

といった神経障害性疼痛が続きます。

一般には、帯状疱疹発症からおおむね3か月以上痛みが続く場合をPHNと呼ぶことが多いですが、定義は研究によって多少異なります。

どんな人がPHNになりやすい?

PHNは誰にでも起こる可能性がありますが、特に注意したいのは、

  • 高齢者
  • 発疹が広い・強い
  • 急性期の痛みが強い
  • 発疹が出る前から強い痛みがある
  • 顔面、とくに三叉神経領域の帯状疱疹
  • 免疫機能が低下している

といったケースです。

「発疹が少ないから痛みも軽い」とは限らず、皮膚症状が落ち着いても神経痛が長く残ることがあります。

まず大切なのは抗ウイルス薬を早く始めること

2025年の日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン」では、急性期帯状疱疹に対する抗ウイルス薬の全身投与は推奨度Aです。

抗ウイルス薬はウイルスDNA合成が活発な発症早期ほど効果を発揮するため、皮疹出現後72時間以内が最も適した開始時期とされています。

添付文書上も、皮疹出現後5日以内に開始することが望ましいとされています。

早期治療は、

  • 新しい発疹が出る期間を短くする
  • 皮疹の治癒を早める
  • 急性期の痛みを軽減する
  • 急性期のQOLを改善する

ことに有効です。

抗ウイルス薬の種類と使い分けについては、「帯状疱疹の治療|抗ウイルス薬はいつまでに始める?」で詳しく解説しています。

抗ウイルス薬だけ飲めば、PHNは防げる?

抗ウイルス薬を早く開始しても、PHNを完全に防げるわけではありません。

抗ウイルス薬は急性期の皮疹・疼痛を改善する重要な治療ですが、PHN発症をゼロにする効果はありません。

そのため僕は、ウイルスを抑える治療と同時に、急性期の痛みをどこまでしっかり抑えるかを重要視しています。

急性期の痛みは、我慢しない方がいい

帯状疱疹の痛みには、炎症による痛みと、神経障害性疼痛が混ざっています。

2025年ガイドラインでも、急性期の痛みに対して薬物療法を行うことが推奨されています。

痛みの強さや性質を見ながら、薬を段階的に組み合わせます。

軽度〜中等度の痛み:NSAIDs・アセトアミノフェン

急性期の軽い〜中等度の痛みには、NSAIDsやアセトアミノフェンを使います。

ガイドラインでは、高齢者が多いことや抗ウイルス薬との併用を考慮して、アセトアミノフェンを第一選択として考えるとされています。

一方、実際の診療では、腎機能・胃腸障害・併用薬などに問題がなければ、僕はロキソプロフェン(ロキソニン)を使うことも多いです。

ただし、帯状疱疹は高齢者に多く、核酸アナログ系抗ウイルス薬も腎排泄型です。

腎機能が悪い人、脱水がある人、高齢者ではNSAIDsを安易に使わないようにします。腎機能低下がある場合は、ロキソプロフェンは避け、別の鎮痛方法を考えます。

ピリピリ・アロディニアが強ければタリージェやリリカ

急性期でも、単なる炎症痛ではなく、

  • ピリピリする
  • 電気が走る
  • しびれる
  • 服が触れるだけで痛い
  • 軽く触るだけで強く痛む

といった神経障害性疼痛が目立つことがあります。

2025年ガイドラインでは、こうした症状が急性期にみられた場合、Caチャネルα2δリガンドをできるだけ早期から使用することが推奨されています。

代表的なのが、

  • ミロガバリン(タリージェ)
  • プレガバリン(リリカ)

です。

僕も、急性期から神経障害性疼痛が強い場合には、ロキソプロフェンなどだけで粘らず、タリージェやリリカを追加します。

ただし、眠気・ふらつきなどに注意が必要で、特に高齢者では転倒リスクも考えます。

また、プレガバリン・ミロガバリンは腎排泄の影響を受けるため、腎機能に応じた投与量調整が必要です。

早くタリージェ・リリカを飲めばPHNを防げる?

ここは少し慎重に考える必要があります。

プレガバリンを早期に開始するとPHN発症を減らしたという報告がある一方、ガバペンチンではPHN発症率に差がなかった研究もあります。

つまり、α2δリガンドを早く開始すれば必ずPHNを予防できる、とまでは言えません。

ただし、急性期の神経障害性疼痛をきちんと軽減する治療としては重要であり、痛みの性質に合わせて使います。

痛みが強ければトラムセット・トラマールも使う

NSAIDsやアセトアミノフェンだけでは痛みが抑えられない場合、弱オピオイド鎮痛薬を検討します。

2025年ガイドラインでも、急性期帯状疱疹の疼痛に対し、トラマドールなどの弱オピオイド鎮痛薬を考慮してよいとされています。

実際の診療でも僕は、痛みが強い場合には、

  • トラマドール(トラマール)
  • トラマドール+アセトアミノフェン配合剤(トラムセット)

などを使うことがあります。

悪心、便秘、眠気、めまいなどの副作用があり、セロトニン作動薬との併用などにも注意が必要です。

薬を使っても痛い場合はペインクリニックへ

薬物療法を組み合わせても強い痛みが続く場合は、神経ブロックを検討します。

2025年ガイドラインでは、一般的な薬物療法に抵抗する急性期の帯状疱疹疼痛では、患者の全身状態を考慮したうえで、

  • 硬膜外ブロック
  • 星状神経節ブロック
  • 肋間神経ブロック
  • 末梢神経ブロック

などを検討してよいとされています。

神経ブロックは急性期疼痛を和らげ、有痛期間を短縮する可能性があります。

ただし、PHNそのものを確実に予防できるという十分なエビデンスはありません。

強い痛みを長期間我慢させるより、薬物療法で難しければ早めにペインクリニックへつなぐことを考えます。

PHNになってしまった場合の治療

発疹が治ったあとも神経痛が続くPHNでは、NSAIDsやアセトアミノフェンだけでは効きにくいことが多くなります。

2025年ガイドラインでは、神経障害性疼痛の第一選択として、

  • プレガバリン
  • ミロガバリン
  • ガバペンチン
  • デュロキセチン
  • 三環系抗うつ薬

などが挙げられています。

それでも十分な効果が得られない場合には、トラマドールなどを次の選択肢として考えます。

「発疹が治ったから薬をやめる」ではない

帯状疱疹では、皮膚症状と神経の回復スピードが一致しません。

水疱やかさぶたが治っていても、痛みが残っている場合には、神経障害性疼痛の治療を継続します。

逆に、発疹が治ったからといって痛み止めを急に全部中止すると、強い痛みが再び目立つことがあります。

症状を見ながら徐々に調整していきます。

一番強いPHN予防は、帯状疱疹そのものを予防すること

PHNを考えるうえで、最も確実性の高い対策は帯状疱疹ワクチンです。

2025年度から、日本では65歳の人などを対象に帯状疱疹ワクチンが定期接種になりました。

厚生労働省によると、PHNに対する予防効果は接種後3年時点で、

  • 生ワクチン:約6割
  • シングリックス(組換えワクチン):約9割以上

とされています。

すでに帯状疱疹を発症している最中の治療ではありませんが、将来の発症とPHNを防ぐという意味では非常に重要です。

顔の帯状疱疹・強い頭痛は別格で考える

顔面、とくに額・鼻周囲など三叉神経第1枝領域の帯状疱疹では、眼合併症に注意します。

耳の周囲の水疱、顔面神経麻痺、めまい、難聴がある場合にはRamsay Hunt症候群も考えます。

強い頭痛、意識障害、項部硬直などがある場合には中枢神経合併症も考えるため、単純な皮膚疾患として扱いません。

IN PRACTICE

実際の診療なら、僕はこう考えます

1 抗ウイルス薬はできるだけ早く開始します

皮疹が出て早いほど抗ウイルス薬の効果を期待できます。帯状疱疹らしい痛みと発疹があるなら、何日も様子を見るより早めに治療を始めます。

2 急性期の痛みを我慢させません

腎機能などに問題がなければロキソプロフェンを使うことが多く、ピリピリ・アロディニアなど神経障害性疼痛が強ければタリージェやリリカも早めに追加します。腎機能が悪い場合はロキソプロフェンを避けます。

3 それでも痛ければトラマドール系まで使います

痛みが強ければトラムセットやトラマールなども選択肢にします。「帯状疱疹だから痛いのは仕方ない」と我慢してもらうより、日常生活や睡眠を保てるレベルまで鎮痛することを目標にします。

4 強い痛みが続けばペインクリニックへつなぎます

薬を重ねても眠れないほど痛い、触れられないほどのアロディニアが続く場合は、神経ブロックも含めて早めに専門医へ相談します。

まとめ

帯状疱疹後神経痛は、発疹が治ったあとも神経障害性疼痛が長く残る合併症です。

完全に予防できる方法はありませんが、帯状疱疹を発症したら、できるだけ早く抗ウイルス薬を開始し、急性期の痛みを適切に治療することが重要です。

急性期はNSAIDsやアセトアミノフェンを基本に、神経障害性疼痛が強ければプレガバリン・ミロガバリン、さらに強い痛みではトラマドール系や神経ブロックまで検討します。

そして帯状疱疹になる前であれば、ワクチンが帯状疱疹とPHNの予防に最も重要な方法です。

参考文献・情報源

医療情報確認日:2026年10月24日

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AUTHOR

日本専門医機構認定 皮膚科専門医
元・総合病院皮膚科医長。現在は新潟のしむら皮膚科クリニックに勤務。
将来、札幌で皮膚科を開業予定。
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